妊娠時の血清インスリン動態に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
正常妊婦,糖尿病妊婦,糖尿病境界型妊婦および肥満妊婦に50g oral glucose tolerance test (50g OGTT)を行ない,血糖および血清insulin (Immuno Reactive Insulin, IRI)を測定して,以下のごとき知見を得た. 1) 正常妊婦(対照群)……耐糖能の低下がないにもかかわらず,空腹時IRI値および50g OGTTによるIRI曲線は,妊娠の進行とともに上昇した. 2) 糖尿病妊婦……空腹時IRI値は対照群に比べて低く,IRI反応も対照群に比べて低く,遅延反応を示した. 3) 糖尿病境界型妊婦……多くの場合,空腹時IRI値は対照群に比べて低く,IRI反応も対照群に比べて低く,遅延反応を示した. 4) 肥満妊婦(肥満群)……非糖尿病群では空腹時IRI値は対照群よりも高く,IRI反応も対照群に比べて高かつた.しかし糖尿病境界型群では,IRI値は非肥満糖尿病境界型群に比べてむしろ低く,IRI反応も非肥満糖尿病境界型群に比べて低く,遅延した. 5) 糖負荷30分後の血糖上昇量に対するIRI上昇量の割合(ΔIRI/ΔBS値)は,正常妊娠の進行とともに上昇した.非糖尿病肥満妊婦のΔIRI/ΔBS値は,対照群に比べて高かつた. 6) 50g OGTTによって測定したIRI値の総和(6回測定の総和,ΣIRI値)と血糖値の総和(6回測定の総和,ΣBS値)の比は,非糖尿病妊婦においては肥満群の方が対照群よりも高かつた. したがつて,正常妊婦においてはその妊娠経過にともなう血糖曲線の変化がほとんどなく,IRI値とIRI曲線とが上昇し,また糖尿病境界型の肥満妊婦におけるinsulin分泌は,糖尿病境界型の非肥満妊婦のそれに比べて低いため,糖尿病境界型の肥満妊婦は糖尿病妊婦と同様に対処し取り扱うべきものと考える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1978-04-01
著者
関連論文
- 母児相関よりみた胎児発育に関する研究
- 正常妊娠時および異常妊娠時における糖・脂質代謝について (胎児発育の生化学--第1回産婦人科代謝研究会より) -- (妊婦の代謝性適応の生理と病理)
- 妊娠時の血清インスリン動態に関する研究