胎盤血管形態異常とガス交換能に関する研究 : Fetal distressの発生機序に関する考察
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概要
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Fetal distressの最大の原因はHypoxiaであり,大別して1) 母体側因子,2) 胎児胎盤側因子にもとずくと考えられているが,個々の直接的因子については,必ずしも,尚,明確ではない.著者は潜在性Fetal distress発生に於ける胎盤因子に着目し,特に妊娠末期の新鮮胎盤について胎盤血管の様相を肉眼的に観察し,その胎盤絨毛膜板血管と末梢絨毛血管の位置,形態の変化がそれぞれの潅流する部位の血液のガス交換に影響し,latent fetal distress発生に関与する可能性を解明しようと試み,次の結果を得た. 1) 妊娠末期胎盤では,胎盤附着部附近に於て二本〓帯動脈の間に交通吻合血管がある.絨毛膜板血管の動脈の太さは静脈より細く,その直径は静脈の約2/3に相当する. 2) 一般に絨毛膜板血管の直径が動・静脈ともほぼ同じであるか或は動脈の方が静脈より太くなつている血管形態異常群(以下A≧Vと略す)の静脈のpH, PO_2値は絨毛膜板血管の動脈直径が静脈より細い血管形態正常群(以下A<Vと略す)の静脈のそれよりも低く,PCO_2値は高い. 3) 母体に66%酸素,34%笑気の混合ガスを投与した帝王切開例の場合,A≧V群の静脈のPH, PO_2値はA<V群の静脈のPH, PO_2値に比して有意に高い(P<0.01). 4) A<V群では,Apgar score平均9.23±1.01であり,A≧V群では,Apgar score 6.24±2.43であつた. 5) A<V群の131例の中,Fetal distress 10例(7%)であり,A≧V群の45例の中,Fetal distress 14例(31%)であつた. 6) A≧V群ではそれが潅流する末梢絨毛基質内の結合組織増生の傾向がみられるものが多い.即ち胎盤絨毛膜板血管形態ならびに血管周囲組織の異常が胎盤ガス交換不全ならびに適応不全を起す直接因子の一つであり,ひいてはFetal distressの要因となり得ることを明らかにした.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1978-03-01
著者
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