妊娠初期自然流産の細胞遺伝学的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ヒト初期自然流産例についてG-band法によつて流産物の染色体分析を行うとともに,染色体異常に係る2, 3の環境要因について検討し次の結果を得た. 1. 309例の自然流産例について内容物の培養を行い200例 (64.7%)の核型分析に成功し,200例中染色体異常は94例 (47.0%)に認められた. その内訳はtrisomy53例,3倍体19例,45×12例,構造異常4例,double trisomy 3例,4倍体2例であつた.組織別に培養成功率と染色体異常率を比較すると,胎児での培養成功率は高い(88.2%)が異常率は低く(20.0%),胎児以外の部分では成功率は低い(63.4%)が異常率は高かつた(49.2%). 2. 45, Xを除く188例の性比は93.8であつた. 3. 流産物の形態像については染色体異常頻度はempty amniotic例が71% (22/31)で最も高く,胎芽50% (14/28),胎児では40% (4/10)であつた.絨毛所見で水腫様変化を示した例の染色体異常率は85.7% (12/14)と高く,異常の2/3は3倍体であつた. 4. 胎内発育状況については染色体異常例の82.5% (52/63)は胎令6週迄に発育停止したものと推定された. 5. 環境要因については,1) 母体年令では染色体異常群(29.0才)は正常群(28.7才)に比しやや高く,染色体異常例では45, X,構造異常で低くD-, G-trisomyでは高い傾向が認められたが有意差はなかつた.2) 受胎季節については温暖期(39.5%)より寒冷期(51.3%)が多かつたが有意差はなく,trisomyは寒冷期(53例中39例)に有意に多く認められた.3) 原爆被曝歴を有する10例中染色体異常は6例(60%)に認められたが,非被曝者25/52 (48.1%)との間に有意差はなかつた.
- 1977-06-01
著者
関連論文
- 妊娠初期自然流産の細胞遺伝学的研究
- 181. 18トリソミー症候群の4剖検例
- 200. 自然流産にみられる染色体異常例の胎内発育状況と絨毛の病理組織学検索
- 124. HCGの妊卵保持に関する免疫学的検討
- 199. Down症候群の核型分布と過剰染色体の由来について
- 115. ヒト胎生初期における染色体異常について
- 142. 妊娠初期に於ける自然流産の染色体学的検討