西ケニヤ農村部におけるHIV感染の乳児死亡率への影響とZidovudine(ZDV)短期療法によるHIV母子感染対策としての有用性
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概要
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西ケニヤ農村部におけるzidovudin(ZDV)短期投与によるHIV母子感染防止策の有用性と期待される効果を検討した.西ケニヤにおいて十分な説明と同意が得られた妊娠18〜22週の無症候妊婦428名に対して抗HIV抗体(以下抗体)を検索した.十分の説明の後, 希望した抗体陽性妊婦にはZDVを妊娠36週から400mg/日, 分娩開始時に300mg, 分娩中に300mg/3時間, それぞれ経口で投与した.HIV陽性妊婦より出生した児は生後4カ月ごとに採血しpolymerase chain reaction法を用いてHIVの検出を試みた.さらに乳児死亡率を検索しHIV感染の有無による死亡率の差を比較した.対象妊婦の抗体陽性率は25.0%(107/428)であった.Kaplan-Meier法を用いた生後12カ月時の児への感染率はZDV投与群(n=48)で14.8%, 非投与群(n=31)で44.5%と, 66.7%の感染予防効果がみられた(p=0.0032).また, 生後12カ月時の児の死亡率は抗体陽性の妊婦から出生した児(n=92)では22.3%, 抗体陰性妊婦の児(n=235)では8.0%と, 抗体陽性の妊婦の児の死亡率が有意に高かった(p=0.0003).さらに, 抗体陽性妊婦より出生した児のうち, HIV感染児(n=20)の生後12カ月時の死亡率は31.1%, 非感染児(n=59)の死亡率は10.2%と有意差があった(p=0.0108).ZDV短期投与が発展途上国農村部においてもHIV母子感染防止に有用であることが判明した.また, HIV感染児を減少させることにより他の発展途上国農村部においても乳児死亡率の低下を期待できると示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 2000-11-01
著者
-
垣本 和宏
和歌山県立医大紀北分院
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垣本 和宏
和歌山県立医科大学産科婦人科学講座:国際協力事業団ケニヤ感染症研究対策プロジェクト(ii)
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垣本 和宏
国立国際医療センター
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垣本 和宏
奈良県立医科大学産婦人科学教室
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Elijah M.
ケニア中央医学研究所
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Elijah M.
ケニア中央医学研究所:国際協力事業団ケニヤ感染症研究対策プロジェクト(ii)
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