産婦人科領域におけるChlamydia trachomatis感染症に関する臨床的検討
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概要
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Chlamydia trachomatisの検出法が確立して日もまだ浅いが, 手軽な検出が可能になり, この微生物が様々な疾患の原因となり得ることが明らかになつて来た. 非淋菌性尿道炎の多くが, このChlamydiaによることが, まず注目され泌尿器科領域で, 最初にその病態や, 有効な治療方法について検討が始まり, STD (Sex transmitted disease)としても注目されるようになつて来た. この様な経過から淋疾の場合と同じようなとらえかたがされ, 産婦人科領域では, 頚管炎としての病原性についての検索から始められた. この結果頚管炎のある女性からもしばしばChlamydiaの検出がみられるようになつた. その後まもなく, 子宮付属器炎や骨盤腹膜炎, さらに急性腹症の内にもChlamydiaが関与する例の存在が確認され, 性行為により伝播されたChlamydiaは, 子宮内から卵管を経て腹腔内に侵入し骨盤腹膜炎を発症せしめることもあることが知られるようになつて来た. その上卵管不妊症の原因にもなり得るとの報告もあり, その充分な対応が望まれるようになつて来た. しかしながら, 臨床的にどのような症状を持つものが実際にChlamydiaの感染があるかは, なお明確になつていない. そこで, われわれは, 何らかの疾患をもつ患者と妊婦を中心とした無症状群と合せ706例についてChlamydia感染の実体を検索した. この結果87例12.3%の陽性率であり, 無症状の妊婦では194人中21人10.8%, 頚管炎では118人中13人11.0%, また骨盤腹膜炎を含む子宮付属器炎では, 202人中30人14.9%の陽性率であつた. 年齢別に検討すると20歳未満が23.1%ともつとも高く, 20〜29歳13.8%, 30〜39歳8.2%の陽性率であつた. これらの結果からChlamydia陽性患者は妊婦にも決して少なくなく20歳未満の若年層にも高頻度にみられ, 将来の妊娠, 出産に伴う産道感染も懸念され, さらに卵管不妊症の発症もあり得ることから充分な検索体制の確立が必要であろうと思われるに至つた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1988-04-01
著者
-
野口 昌良
愛知医科大学産婦人科
-
岡本 俊充
愛知医科大学産婦人科
-
岡本 俊充
愛知医大
-
野口 昌良
愛知医科大学
-
稗田 茂雄
蒲郡市民病院
-
石原 実
愛知医科大学産婦人科学教室
-
稗田 茂雄
愛知医科大学産科婦人科学教室
-
秋田 敏行
森川病院
-
秋田 敏行
愛知医科大学産婦人科学教室
-
稗田 茂雄
愛知医科大学 産婦人科
-
石原 実
愛知医科大学 産婦人科
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