妊婦運動と母体循環動態の変動に関する研究
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概要
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近年妊婦運動が推奨されているが, その循環動態に及ぼす影響については充分に解明されていない. そこで運動に伴い生じる母体循環動態の変動が妊娠経過とともにどのように推移するかを検討した. 妊娠16週より週2回最大酸素消費量(VO_2max)の60〜70%に相当する中等度の運動を行い妊娠中合併症がなく満期出産を行った妊婦10名を妊婦運動群とし, 同時期に合併症がなく満期出産した妊婦のうち, 妊娠中特別な運動を行わなかった同年齢の妊婦15名を妊婦非運動群とした. 非妊娠の対象として年齢, 体重をマッチさせた女性のうち週2回中等度の運動を行っている非妊婦運動群11名, 運動を行っていない非妊婦非運動群15名を選んだ. 妊娠20〜24週, 25〜28週, 29〜36週および産褥1力月において安静坐位時と運動時(エルゴサイザー^<(R)> によるペダル運動)にImpedance CardiographyとFinapresを用い心拍出量・一回心拍出量・心拍数・収縮期圧・拡張期圧・平均血圧を非侵襲的かつ連続的に測定し, さらに平均血圧を心拍出量で除することにより血管抵抗を求めた. そして妊娠の進行とともに母体循環動態の変動を検討した. 安静時の平均血圧は, 運動群では妊娠中, および産褥1力月まで低値を維持していたが, 非運動群では妊娠20週まで低値を維持するものの, その後妊娠経過とともに上昇し, 産褥1力月では非妊時よりさらに上昇した. 運動時平均血圧は運動群では妊娠28週で最低値となり以後も低値を推移した. 運動時血管抵抗は妊娠により両群において低下したが運動群では低値を持続したのに対し非運動群では28週以降上昇を示した. 妊娠経過中に切迫流早産などの安静を要する異常が認められない限り妊娠中に運動を積極的に取入れることにより妊娠全期間を通じて血管抵抗を低下させることができ, 血圧の上昇を防止し妊娠性高血圧症の発症の予防につながることが推察された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1997-07-01
著者
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