ヒト卵巣莢膜細胞層の単層細胞培養法 : その形態学的・機能的研究
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概要
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従来主に組織片培養系を用いて研究されてきたヒト卵巣莢膜細胞層の単層細胞培養法を初めて確立し,培養細胞の形態学的特徴とステロイド分泌能を検討した.正常ヒト卵巣より卵胞期後期に卵胞を採取し,莢膜細胞層を遊離後collagenase及びhyaluronidaseにて処理し,得られた遊離細胞を10日間単層培養した.まず酵素処理前の莢膜組織の組織検査により,顆粒膜細胞の混入のないことを確認した.次いで組織化学法にて,培養細胞中に多数の脂質願粒と3β hydroxysteroiddehydrogenase(3βHSD)活性を証明した.3βHSD活性は約60%の培養細胞に陽性であり,これは莢膜組織のsteroid secretingcenとfibroblasticcellの構成比にほぼ一致するものであった.培養細胞の主要分泌ステロイドは△_4 androstenedione(△_4)とprogesterone(P)であり,△_4は培養早期に31.6±1.9ng/1×10^5cells/2daysと多量に分泌され,その後は減少した.一方Pは,中等量の分泌(9.O〜21.3ng/1×10^5cells/2days)が培養10日間を通じて保たれた.Estradiolの分泌は,非常に少量であった.さらにステロイド分泌へのゴナドトロピンの影響を検討したところ,LH/HCGの添加により△_4Pの分泌は用量反応的に刺激され,LH10ng/mlにより約4倍,HCG10ng/mlにより約2倍に増加した.又,dibutyrylcyclicAMP(Bu_2cAMP)によっても△_4Pの分泌は用量反応的に刺激され,Bu_2cAMP10^3Mにおいて4.4倍に増加した.LH/HCGへの反応性は培養開始後日数が経過すると低下したが,Bu_2cAMPに対しては10日目まで反応が保たれた.以上より,本法による培養莢膜細胞はステロイド分泌細胞であることが形態学的に証明され,機能的にもLHに支配されたandrogen分泌という莢膜のinvivoでの機能をとどめることが明らかにされた.従って本培養系は,今後の莢膜のinvitroでの研究に十分有用であると考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1984-06-01
著者
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