多嚢胞性卵巣のsteroidogenesisの研究 : 卵胞液中内分泌環境と培養顆粒膜細胞のprogesterone分泌能
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概要
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多嚢胞性卵巣(PCO)の本態を解明するため,正常卵胞の成熟過程におけるsteroidogenesisの変化,特に穎粘膜細胞をとりまく卵胞液中各種ホルモン濃度の推移,ならびに培養穎粘膜細胞のprogester one(P)産生能に対するdibutyryl cyclic AMPおよびLHの作用をPCOと比較検討した.1)卵胞液中ホルモン濃度.(1)LHは卵胞成熟に従って高値となり,PCOでは卵胞期初期,中期と比較して有意の高値を示した.(2)androstenedione(△_4),testosterone(T)は卵胞期中期に最高値,後期に最低値を示し,PCOの△_4は卵胞期各期より有意の高値を呈したが,Tに関しては有意差はなかった.(3)estrogenは卵胞成熟と共に増加し,PCOは卵胞期初期とほぼ同様の値を示した.(4)P,FSH,prolactinは,PCOと卵胞期初期,中期で差はなかった.2)顆粒膜細胞培養実験.(1)培養穎粘膜細胞のP産生能は卵胞成熟に従って増加した.(2)LH添加に対してP産生能は増加を示すが,卵胞成熟と共にその反応性は低下した.(3)PCOでは,P産生能は卵胞期中期と同様であったが,LH添加に対する反応性は低く,卵胞期後期とほぼ同様であった.(4)dibutyryl cyclic AMP添加に対する反応性は,PCOと卵胞期初期,中期で差はなかった.本研究により,PCOの卵胞液中ではLH,△_4が高値を示し,他のホルモンは卵胞期初期,中期と差がないことが明らかとなった.培養穎粘膜細胞は,卵胞成熟に従ってLH添加に対する反応性が低下するが,これは卵胞液中LHの濃度差に起因するものと考えられる.またPCOではLH添加に対する反応性は不良であるが,dibutyrylcydicAMPに対しては正常卵巣と同様の反応性を示す.よって,PCOの成因に酵素障害は考えにくく,LHの持続的高値,およびその結果としてのandrogen分泌の先進が卵巣の腫大,多嚢胞化,白膜の肥厚を促すものと推測される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1984-04-01
著者
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