妊娠・分娩による母体血清HPL,血清酵素及び母体尿中E_3の変動
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概要
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胎児胎盤機能の状態を知るために母体尿中E_3,母体血中HPL (Human placental lactogen), CAP (Cystine aminopeptidase), HSAP (Heatstable alkalinephosphatase)の変動を測定し,正常妊娠時の経過および正常範囲を定めると共に妊娠月数,胎児胎盤の発育との関係について検討し,4測定値間の相互関係を求めてE_3 HPLが最も妊娠経過をよく示すことを実証した.さらに異常妊娠との関係について検討した. 1) E_3,HPL,CAP,HSAPともに妊娠経過と共に増加し妊娠月数との相関はE_3+0.60, HPL+0.77, CAP+0.56, HSAP+0.47であつて4者ともに有意の正の相関を認めた.その中でもHPLが最も相関が大きかつた.なお各測定値の対数をとり妊娠月数との相関を調べるとE_3+0.81, HPL+0.77, CAP+0.61, HSAP+0.51となりE_3の相関はさらに良くなつた. 2) 妊娠10ヵ月の平均値および棄却限界(括弧内5%危険率)はE_3 28.85 (8.6〜97.3) HPL 8.03 (4.3〜15.2) CAP 2.4 (0.7〜7.8) HSAP 11.65 (2.7〜49.2)である妊娠9ヵ月以後の値をも考慮しE_3は10以下HPLは4以下を異常値としたい. 3) 4者間には多少の相関があり特にHPLとE_3の相関はやゝ大であつた.HPLとHSAPとの相関が最も小さいように思える. 4) E_3,HPL,CAP,HSAPとも胎盤重量,胎盤面積,児体重との相関は認められなかつた. 5) 陣痛発来の前後に有意の差も認められなかつた. 6) 羊水中のHPL, CAP, HSAPは母体血中HPLの1/2,CAPの1/3HSAPの2倍であつた. 7) 〓帯血中のHPL, CAP, HSAP,は母体血中より明らかに低値を示し,HPLでは1/9,CAPでは1/4,HSAPでは1/2であつた.また〓静脈の方が〓動脈中より高値を示すことが多いので胎盤由来のものと考えられる. 8) 分娩後HPLは早期に消失しCAP,HSAPは長く高値を保つた. 9) 異常妊娠では妊娠中毒症ではバラツキが大きく一部に高値を示した. 双胎では高値を示し子宮内胎児死亡・切迫流早産・無脳児・奇形・胞状奇胎では低値を示した.RH不適合・水頭症・予定日超過では正常値を示した.また胎児心音異常では低値を示した.
- 1976-02-01