ラット実験的子宮内膜症作製時におけるnatural killer (NK)活性の変動および妊孕能の変化に関する検討
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概要
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われわれは, 子宮内膜症 (以下内膜症と略す)において末梢血 Natural Killer (NK)細胞の分化が抑制されていること, および内膜症病巣局所から NK活性を抑制する物質が産生されていることを明らかにしてきた. そこで今回は, 内膜症の発生に伴う NK活性および妊学能の変化を動物モデルを用いて検討した. 方法は, (1) ラットの子宮内膜を右腹壁の腹膜に縫合移植することにより子宮内膜移植モデル (以下移植モデルと略す)を作製した. 対照モデルは脂肪組織を同様に移植した. (2) 移植モデルの脾細胞の NK活性を, K-562を target cellとして ^<51>Cr-releaseassay法により測定した. (3) 移植モデルの移植内膜を切除後, 7週で脾細胞のNK活性を測定した. (4) 移植モデルにダナゾール (100mg/kg/day, 経口), ブセレリン (25μg/kg/day, 皮下注射)を4週間投与し脾細胞のNK活性を測定した. (5) 移植内膜培養上清の, 健常ラット脾細胞のNK活性に及ぼす影響を調べた. (6) 移植モデルを雄ラットと交配させ, 分娩仔数および仔体重を測定した. また排卵数を測定した. 結果は, (1) 移植内膜は嚢胞を形成し, 生着率は100%であった. (2) 移植モデルのNK活性は, 対照モデルに対して有意(p<0.001)な低値を示した. (3) 移植した内膜を切除するとNK活性は有意(p<0.05)に上昇し, 回復傾向を示した. (4) ダナゾールおよびブセレリンの投与では, NK活性に有意な変動はみられなかった. (5) 正常子宮内膜および移植内膜の培養上清には共にNK活性抑制作用があるが, 抑制作用は移植内膜で有意(p<0.001)に強かった. (6) 移植モデルの分娩仔数は, 対照モデルに対して有意(p<0.05)に減少したが, 排卵数は減少していなかった. 以上のラットモデル実験の結果より, 以下の3点が明らかとなった. (1) 子宮内膜の自家移植は, 脾細胞のNK活性を低下させる. (2) 移植内膜切除によりNK活性は回復するが, 薬物投与ではNK活性は回復しない. (3) 妊孕能低下の原因は排卵障害ではなく, 排卵以降の障害である.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1995-05-01
著者
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