子宮頚部前癌病変および癌のAlkaline Phosphataseに関する光顕・電顕学的酵素組織化学的研究
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概要
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子宮頚部における正常扁平上皮,頚部腺上皮,予備細胞および化生上皮,異常上皮,異形成上皮(軽度,高度,疑癌性),上皮内癌,浸潤癌の各上皮につき,Alkaline phosphataseの活性を酵素組織化学的に光顕レベルおよび電顕レベルで観察した. 1) 光顕的には上皮の深層より表層にわたつて細胞周辺部を中心として索〜帯状にみられる活性(ALP I型分布,以下ALP I型と略)と,上皮表層の角化部のみを中心として深層には活性のみられないもの(ALP II型分布,以下ALP II型と略)とが区別される. 2) ALP I型は正常扁平上皮では陰性,これとは対照的に,初期〜中期化生上皮では,90%以上が陽性である. また,軽度および高度異形成上皮の25%,疑癌性異形成上皮の40%,上皮内癌の50%に陽性の部を認める.つまり,病変が形態学的に上位になるにつれて陽性例が多くなる.浸潤癌では,ALP I型陽性例は未熟型であり,中間〜成熟型のものは陰性である. 3) 電子顕微鏡レベルでの酵素細胞化学的研究より,ALP I型は化生上皮,異形成上皮,上皮内癌,浸潤癌のうち,tonofilamentや,desmosome結合のすくない,つまり扁平上皮としての性格をあまり備えていない比較的未熟な細胞の細胞膜に主として認められる. 4) ALP II型は,正常扁平上皮ではごくまれにしかみられず,異常上皮で陽性率がやゝ増加し,扁平上皮への分化傾向を明白に残している軽度異形成上皮および浸潤癌の中間〜成熟型に最も高率にみられた.また電顕レベルでの酵素細胞化学よりこの表層角化部の活性は,主として細胞間腔にあることが分かつた.したがつてALP II型は扁平上皮の異常な分化との深い関係が推察される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1976-11-01