MRSA保菌妊婦の感染経路と新生児感染
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概要
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新生児は compromised hostであり, MRSAを保菌した場合, MRSA感染症発症の危険性が高いと報告されている. 広島市立安佐市民病院産婦人科では院内感染防止のため環境整備には充分注意をはらい, 外部からMRSAの持込みを防ぐために妊婦の鼻腔ブドウ球菌検査を行っている. MRSA保菌妊婦は身体各部位の保菌状態, 家族の鼻腔ブドウ球菌検査を調査した. 入院中は個室を使用し, 環境への排菌状態, 新生児のMRSA保菌状態を調査した. 1. 妊婦のMRSA保菌率は, 0.8%(医療従事者3.7%, 非医療従事者0.5%)であった. 感染経路としては二通り考えられた. (1) 非医療従事者である妊婦では, まずなんらかの原因で子供が MRSAを保菌し, その子供から感染した可能性が疑われた. (2) 医療従事者である妊婦では, 職場において付着したMRSAが除菌されず, そのため保菌状態となった可能性と非医療従事者の場合と同様に子供からの感染を受けた可能性が考えられた. 2. 健康保菌者であっても, 環境にMRSAを排菌していることが確認された. 3. 院内感染対策が充分になされた環境下では, 新生児のMRSA感染は, 保菌者である産褥婦から受けることが判明した. 4. 退院時の新生児及び1ヵ月の乳児の鼻腔 MRSA保菌率は, 産祷婦鼻腔 MRSAが除菌された場合 (0%, 20.0%)は, 除菌されなかった場合 (66.7%, 54.5%)に比べて, 明らかに低かった. 以上より, 外部からの MRSA持込みによる, 院内感染防止のためには, 妊婦の鼻腔ブドウ球菌検査は必要である. そしてMRSAが検出された場合にはたとえ保菌者であっても, 積極的に除菌を行うとともに, 保菌妊婦から他の陰性妊婦への感染を防ぐとともに, 母子感染で MRSAを保菌した新生児から他の新生児への感染を防ぐために, 個室の使用と母子同室の必要性が明らかとなった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1995-03-01
著者
-
濱田 朋子
広島大
-
三田 尾賢
広島市立安佐市民病院
-
三田尾 賢
広島市立安佐市民病院
-
平位 剛
広島市立安佐市民病院
-
濱田 朋子
広島大学医学部産科婦人科学教室
-
三田尾 賢
広島市立安佐市民病院産婦人科
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