妊娠中毒症における血中コラーゲンと胎盤変性度の関係
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概要
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1. 免疫組織化学的検索 : 正常妊娠胎盤・妊娠中毒症胎盤におけるIII型とIV型コラーゲンの局在をAvidin-Biotin complex法(以下ABC法と略す)によって免疫組織化学的に検索した. 正常妊娠絨毛では, III型コラーゲンは絨毛組織の結合織に比較的淡く, IV型コラーゲンは胎児血管及び絨毛上皮基底膜に線状に一致した3.3'-diaminobenzine tetrahydrochloride dihydrate (以下DABと略す)反応産物として認められた. 妊娠中毒症胎盤には, 比較的光学顕微鏡的変化が少ない絨毛と強い変化を起こし変性している絨毛とがあり, 前者の結合織にはIII型と, IV型コラーゲンに対するDAB反応産物が顕著に認められ, 後者の結合織はヒアリン変性を起こし, DAB反応産物はわずかに認められるのみで, コラーゲンの減少・消失が惹起されていた. 2. 血清学的検索 : ヒアリン変性絨毛からコラーゲンが分解されて母体血中に遊出してくる過程でプロコラーゲンIIIペプチド(P-III-P)とIV型コラーゲン7Sドメイン(7S)が母体血中に増加することを想定して, 正常妊娠末期妊婦, 妊娠中毒症妊婦, 非妊婦の血情中P-III-P, 7Sを測定した. 1) 血中P-III-Pのそれぞれの平均値は, 正常妊娠末期妊婦0.66U/ml, 軽症妊娠中毒症0.93U/ml, 重症妊娠中毒症1.65U/mlと妊娠中毒症が重症化するに従って有意に上昇した. 2) 血中7Sのそれぞれの平均値も正常妊娠末期妊婦6.26ng/ml, 軽症妊娠中毒症7.17ng/ml, 重症妊娠中毒症8.91ng/mlと妊娠中毒症が重症化するに従って有意に上昇した. 3) 妊娠中毒症妊婦においてP-III-P 1.0U/mlかつ7S 8.0ng/mlを越える症例では子宮内胎児発育遅延(IUGRと略す)の合併頻度は有意に高率であった. したがって妊娠中毒症例の血情中におけるこれらコラーゲン関連物質測定により, 1. に記述した妊娠中毒症胎盤における変性絨毛の量が推定できる可能性が示唆された. またこれらの物質が上昇した時にはIUGRの発生率が有意に高率であった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1994-10-01
著者
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