抗癌剤が妊孕能に及ぼす影響の定量的研究
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概要
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生後6週のC57BL/6雌マウスに, 抗癌剤Cisplatin (CDDP), Adriamycin (ADM), Cyclophosphamide (CPM)を, 卵細胞の50%(ED50)又は80%(ED80)破壊量で投与し, 生後11週と19週に同系雄マウスと交配させて妊孕能を検討した. 1) 母獣体重:11週齢群では妊娠前の体重ほCDDP群で有意(p<0.05)に小さかったが分娩時の体重には差はなかった. 19週齢群では妊娠前の体重には差はなかったが分娩前ではCDDP・ED80群, ADM・ED50群, ED80群は対照に比し有意(p<0.05)に少なかった. 2) 妊孕率:対照群の妊孕率は11週齢, 19週齢ともに83%であったが, 抗癌剤投与群では11週齢群全体がED50群で61%, ED80群では50%と低下傾向(p<0.1)が認められた. 19週齢ではED50群で61%と減少(p<0.1)を認めED80群では39%と有意(p<0.05)に低下した. 3) 胎仔数:母獣1匹当りの胎仔数は対照群の8.2±1.1匹に対し11週齢群, 19週齢群ともに各薬剤群では差はなかったが19週齢群のED80群全体としてみれば7.0±0.6匹と減少傾向(p<0.1)がみられた. 4) 胎仔体重:齢群では各薬剤ともに対照と差を認めなかったが, 19週齢群ではCDDP, ADMのED80群で有意(p<0.05)に小さかった. 5) IUFD, 胎仔奇形11週齢群では, 対照群にIUFD, 奇形ともに認めなかったが, ADM・ED50群で, IUFD4, 奇形2(発生率23.2±10.4%), CPM・ED80群でIUFD2, 奇形1(発生率8.1±2.7%)で有意(p<0.05)に増加した. 19週齢群では, 対照群の異常胎仔発生率4.0±3.6%に対しCDDP・ED50群で, 9.7±3.9%と有意(p<0.05)に増加した. 以上の結果から抗癌剤投与後の妊孕性を総括すると, 11週齢群はgrowing follicleの障害により, 受胎能力の低下とともに障害卵によるIUFD及び奇形発症が考えられた. これに対し, 19週齢群はprimordial follicleの絶対数の減少により, 排卵数減少に基づく胎仔数の減少, また卵巣機能の悪化による子宮環境の二次的劣悪化が胎内発育障害を招いたと考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1994-07-01
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