先体反応率を用いた新しい精子受精能評価法に関する検討
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概要
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新しい精子受精能評価法として先体反応率を利用することが可能か否かを検討する目的で本研究を行った. 65例の男性から得た精子をCa ionophore A23187 (以下, ionophore)で処理した後, ハムスターテストを行い精子侵入率などを検討するとともに, 授精時ならびに授精3時間後の先体反応率を測定した. 先体反応完了精子をFITC-PSAによる染色性によりequatorial segmentに帯状の螢光を示す精子(A型)と先体全体がほとんど螢光を示さない精子(B型)に区分し, さらに各々をHoechst 33258の染色性により死滅精子と生存精子に区分し, 観察総精子数に対する各タイプの精子の比率(先体反応率)を求めた. また, 健康男性7例を対象として, ionophore濃度がハムスターテスト, 先体反応率に及ぼす影響を検討した. その結果, 以下の成績を得た. 1. 授精中の3時間の間に運動率と生存率は低下し, A型生存精子の比率も有意に低下した. 一方, 死滅精子の比率は有意に増加した. 2. 精子濃度, 運動率(原精液, 授精時, 授精3時間後), A型生存精子およびA型死滅精子の比率とハムスターテストの成績(SPR:精子侵入率, SPL平均侵入精子数)との間に有意(p<0.01)の相関が認められ, 特に授精時のA型生存精子の比率(以下,%AR)はSPR, SPIに対して各々69.2%, 65.3%の寄与率であった. 3. %ARが5%未満であった27例中20例(74.1%)はSPRが30%未満の受精能異常例であり, 一方, %ARが5%以上の38例中31例(81.6%)はSPR70%以上の受精能正常例で, 特に%ARが10%以上の19例中16例(84.2%)ではSPRが100%であった. 4. ionophoreの添加濃度が10μMの群は非添加(対照)群や5μM群に比べ%AR, SPR, SPIが有意に高値であった. 以上の成績から, ionophore処理時のA型生存精子の比率(%AR)は精子受精能を評価する指標として有用であり, %ARが10%以上を正常, 5%以上10%未満を境界, 5%未満を異常とする判定基準が提唱される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1994-07-01
著者
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