着床前遺伝子診断を目的としたマウス体外受精胚に対するbiopsy法の検討
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概要
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着床前遺伝子診断を目的としたbiopsyは, 1) 胚発育に影響を及ぼさないこと, 2) 遺伝子診断に適した検体が摘出できることが必須の条件である. 今回4, 8細胞期胚に対するbiopsy法であるdisplacement法とextrusion法に修正を加えたbiopsy法 (以下expulsion法) について, 上記条件を検討した. ICR系のマウスを用いて体外受精を行い, 正常受精胚のみを培養した. 4, 8, 16細胞期胚に対してexpulsion法によるbiopsyを行い, 4, 8細胞期胚より1個, 16細胞期胚より1〜2個の割球を摘出した. 1. Expulsion法によるbiopsyが胚発育へ及ぼす影響を検討する目的で, 被摘出胚の体外培養を行い胞胚形成率について検討した. さらに, 被摘出胚をrecipientへ移植し, 偽妊娠18日目の帝王切開時に着床率, 胎仔形成率, 胎仔・胎盤の発育について検討した. Recipientとして精管結紮雄と交配させた偽妊娠雌を用いた. 対照は, biopsyを行わずに無処置のまま培養および移植を行った. その結果, 3/4細胞胚の胞胚形成率, 着床率, 胎仔形成率は, 対照と比較して有意に低率であった. 7/8, 14〜15/16細胞胚の胞胚形成率, 着床率, 胎仔形成率は, 対照と有意差を認めなかった. また, 被摘出胚より発生した胎仔・胎盤はすべて正常な発育が認められ, 胎仔外表奇形も認めなかった. 2. Expulsion法により摘出した割球の遺伝子診断への適性を検討する目的で, 摘出単一割球をdual PCR法によるDNA増幅に供した. その結果, 245bpのmyogenin遺伝子および147bpのSry遺伝子の増幅が可能であった. 以上, expulsion法によるbiopsyを8細胞期胚および16細胞期胚に対して行った場合, 胚発育に影響を及ぼすことなく, DNA増幅が可能な割球を摘出できることが示された. また, 4細胞期胚に対するbiopsyは, 胚発育に影響を及ぼす可能性が示された.
- 1993-07-01
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