ヒトパルボウイルスB19感染の疫学ならびに胎児障害性に関する研究
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概要
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妊婦におけるヒトパルボウイルスB19 (以下B19と略) 感染の危険性, B19と初期流産ならびに非免疫性胎児水腫との関連性, B19胎内感染による胎児水腫の発生機序について検討を行い以下の成績を得た. 1) Sandwich ELISA法にて抗B19 IgG抗体保有率を調査したところ, 伝染性紅斑流行 (1986〜1987年) 後の妊婦では20%であった. また非妊婦も含めて年齢層別に流行後の保有率をみてみると, 5〜14歳の年齢層においては40%台であるが, 15〜34歳の年齢層では17〜26%と低値であった. このことから, 今後10年間に伝染性紅斑が流行したさいには, 約80%の妊婦がB19感染の危険にさらされることが判明した. 2) 1986〜1987年の伝染性紅斑大流行期における妊婦の抗B19 IgM抗体陽性率をCapture ELISA法にて調査したところ, 2/144 (1.4%) であった. これにその抗体陽性期間が約3ヵ月であることを加味すると, 今後の大流行期における妊婦のB19感染率は4.3%と想定された. 3) In situ hybridization (以下ISHと略) を使って, 伝染性紅斑流行期の初期流産105例でB19 DNA の有無を調べたが, すべて陰性であった. このため, B19胎内感染は, 初期流産の原因としては否定的であった. 4) 非免疫性胎児水腫11例で, ISHを用いてB19 DNAの有無を調べたところ, これまで原因不明とされていた5例中2例 (40%) からB19 DNAが検出された. 5) B19胎内感染による胎児水腫2例でISHを用いてB19 DNAの局在を調べたところ, 唯一赤芽球からのみB19 DNAが検出され, 心筋細胞では陰性であった. したがって, B19胎内感染による胎児水腫の発生機序は, 赤芽球の感染, 破壊による重症貧血が主体をなすものと考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1993-06-01
著者
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