前期破水におけるインターロイキン6の関与 : 生化学的検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
前期破水に起因する早産の一因として絨毛羊膜炎の存在が考えられており, 母体血清CRPの測定が切迫早産管理上のマーカーに用いられている. 一方, 最近, インターロイキン6 (IL-6)により血中CRPが誘導されるという成績が報告^<2)>された. そこで前期破水とIL-6との関係を究明する目的で, 絨毛膜細胞と羊膜細胞におけるIL-6産生活性, およびIL-6添加による細胞の形態変化などを検討し, 以下の成績を得た. 1. ヒト卵膜より絨毛膜と羊膜を分離し, 各々より細胞を分離・培養した. 2. 絨毛膜細胞と羊膜細胞のIL-6産生量を比較したところ, 羊膜細胞では4pg/ml/24hrs, 絨毛膜細胞では425pg/ml/24hrsと後者でIL-6産生活性が有意(p<0.01)に高いことが明らかとなつた. 3. 炎症性サイトカインであるIL-1添加(0.1U/ml〜10U/ml)によりIL-6産生は高まり, IL-1 10U/ml添加で, 絨毛膜細胞では43.2ng/ml/24hrs, 羊膜細胞では50.3pg/ml/24hrsのIL-6がそれぞれ産生された. 4. Lipopolysaccharide (LPS) (10μg/ml)添加によつても絨毛膜細胞のIL-6産生量は上昇(5.82ng/ml/24hrs)したが, 羊膜細胞ではIL-6産生促進は認められなかった. 5. 羊膜細胞に100ng/mlのIL-6を添加し, 24時間後にfluorescein isothiocyanate labelled (FITC-) phalloidin でF-アクチンを調べたところ, IL-6によるF-アクチン量の増加, 細胞間隙の拡大が認められた. 6. 羊膜細胞と絨毛膜細胞をトランスウェルを用いて共存培養すると, IL-1(10U/ml)添加により, 羊膜細胞のF-アクチン量は対照群に比べ約2倍の増加が認められた. 以上より, 絨毛膜細胞はIL-1やLPS刺激により多量のIL-6を産生・放出し, このIL-6によつて羊膜細胞の収縮が起こり, 羊膜細胞層の破綻から前期破水にいたる可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1992-06-01
著者
関連論文
- P1-20 子宮頸部上皮内腫瘍に対する高周波凝固術の検討(Group3 子宮頸部悪性腫瘍3,一般演題,第60回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P3-232 産褥期に卵巣癌が診断された1例(Group128 卵巣腫瘍13,一般演題,第62回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P3-163 当院における子宮頸部円錐切除術の検討(Group119 子宮頸部悪性腫瘍11,一般演題,第62回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P2-173 当院における子宮頸癌患者の年齢層別検討(Group65 子宮頸部悪性腫瘍6,一般演題,第62回日本産科婦人科学会学術講演会)
- O-008 当院における出生前羊水検査の検討(Group2 胎児・新生児II,一般口演)
- 子宮頸管熟化不全 (子宮疾患・子宮内膜症の臨床--基礎・臨床研究のアップデート) -- (機能異常)
- P3-143 血清Antimullerian Hormone : AMH値の年齢別検討(Group83 生殖生理・病理2,一般演題,第60回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P1-255 卵巣容積による卵巣機能の検討(Group29 生殖内分泌1,一般演題,第60回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 52. Giant cell tumourと思われた子宮体部肉腫の一例(示説, 第24回日本臨床細胞学会秋季大会記事)
- ART施行前の遺伝カウンセリングの一環としての核型分析
- 重症妊娠中毒症既往妊娠における当帰芍薬散の有効性の比較検討(一般演題:ポスター)
- 既往帝王切開妊婦の経膣分娩に関する検討
- 当院における双胎間輸血症候群のターミネイション時期に関する検討
- P2-251 子宮筋腫腫瘍径におけるGnRHaへの反応とbody mass indexの検討(Group63 子宮筋腫3,一般演題,第60回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P1-243 子宮内膜細胞が急激に増殖し,非産褥性子宮内反症を生じた1例(Group28 その他の良性・悪性腫瘍1,一般演題,第60回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 羊水過多症・過少症 (特集 産婦人科診療Data Book)
- 帝王切開後経腟分娩(VBAC) (特集 ハイリスク妊娠とその後のサポート--次回妊娠のケア) -- (帝王切開)
- 当院における単胎早産症例の死亡率と脳性麻痺発生率に関する検討
- 多胎妊娠の検討
- 産科医療とインフォームドコンセント (特集 魅力ある周産期研修のために--産科編)
- シクロフェニル周期におけるARTの臨床的検討
- 胎児期に診断されたガレン静脈瘤の1例
- 妊婦における抗トキソプラズマ抗体保有率
- 正常受精が確認できなかった胚の染色体構成の検討とその着床前診断の可能性
- ヒト桑実期/胞胚期移植の臨床的検討
- モザイク胚における割球を用いた着床前診断の可能性と限界
- 相互転座症例における着床前診断の可能性
- 着床前診断の実際
- 年齢因子によるARTの成績
- 着床前診断を目的とした単一割球の体外培養の試み
- 前核期胚における胚評価法の検討
- 卵巣におけるDAZL遺伝子の発現
- 前期破水におけるインターロイキン6の関与 : 生化学的検討
- わが国の妊産婦死亡の現況 (特集 妊産婦死亡予防に向けて--まず行うべきこと)
- 27-21.新鮮胚の輸送(トランスポート)凍結融解胚移植法における臨床的検討(第133群 不妊・不育14)(一般演題)
- 画像診断ライブラリー 腹部感染症 診断のポイント(13)Pelvic inflammatory diseaseの腹部画像診断
- Undocumented embryo における胚の倍数性と性染色体構成の着床前診断
- 妊娠中毒症におけるアポリポ蛋白の検討
- 臍帯血中のアポリポ蛋白質AI値の検討
- トランスポートART (t-ART) の基礎的検討に基づいた臨床応用の有用性について
- Maturation promoting factor(MPF) の顕微注入によるマウス 2 cell block の解除に関する検討
- ヒト体外受精卵の輸送に関する基礎的検討
- ARTプログラムにおける採卵日固定刺激法の効果について
- 妊娠中毒症におけるアポリポ蛋白測定値の検討
- 助産所の嘱託医と嘱託産科医療施設 (産科医・助産師・看護師の連携) -- (助産師の現状)
- P2-9-14 ハイリスクHPV陽性例の検討(Group82 子宮頸部腫瘍HPV1,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- E-2 統合失調症を合併した婦人科癌終末期患者の1例(一般演題E メンタルヘルス関連II,痛みと女性,第40回日本女性心身医学会学術集会)
- 腰痛 (特集 産婦人科の薬剤使用プラクティス : 病態別処方(産科編)) -- (妊娠中の偶発症状・疾患)
- 症例報告 G-CSF産生子宮頸癌の1例
- 卵巣転移を認めたGISTの1例
- 意識障害をきたしオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症と診断された妊娠の1例
- 症例報告 妊娠20週で母体心肺停止をきたし臨床的羊水塞栓症と診断された1例
- 当院の産科における貯血式自己血輸血の検討
- 当院における分娩時出血量の検討
- 症例報告 胎児超音波検査で出生前診断した先天性横隔膜ヘルニアの1例
- 腹腔鏡下子宮外妊娠手術の術式による適応と限界についての検討
- タイトル無し
- P3-29-1 死胎児症候群あるいは羊水塞栓症が原因と考えられた,妊娠20週の母体心肺停止をきたした1例(Group 141 妊娠・分娩・産褥の生理・病理(症例)1)
- P3-38-5 多科連携により管理したエブスタイン奇形合併前置癒着胎盤の1例(Group 150 胎盤(症例)1)
- P3-6-9 子宮頸部腫瘍に対する子宮温存療法の検討(Group118 子宮頸部腫瘍・治療2)
- 妊娠初期に円錐切除術を行い正期産分娩に至った子宮頸部絨毛腺管状乳頭腺癌の1例
- P1-52-4 内***結核の2例(Group 52 感染症2,一般演題,公益社団法人日本産科婦人科学会第65回学術講演会)
- P3-27-6 前置胎盤症例における回収式自己血輸血の有用性(Group 132 胎盤3,一般演題,公益社団法人日本産科婦人科学会第65回学術講演会)
- P3-13-4 子宮内膜症性嚢胞にて左付属器摘出後に子宮頸部左側後壁に明細胞癌が発症した1例(Group 118 卵巣腫瘍・診断・治療(症例)3,一般演題,公益社団法人日本産科婦人科学会第65回学術講演会)
- タイトル無し
- タイトル無し
- タイトル無し
- タイトル無し
- 卵管妊娠に対する腹腔鏡下治療後の尿中hCG推移
- 卵巣嚢腫に対する腹腔鏡下手術の検討
- P2-2-1 子宮頸部腫瘍に対する子宮温存療法の有用性(Group 54 CIN・その他・診断・治療2,一般演題,公益社団法人日本産科婦人科学会第65回学術講演会)
- 神経外胚葉分化を伴った子宮癌肉腫の1例