婦人のChlamydia trachomatis感染の疫学的調査及び診断, 治療における特異的血清IgA, IgG抗体測定の意義
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概要
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産婦人科領域における Chlamydia trachomatis (以下 C. trachomatis)感染の実態を疫学的, 更に病態との関連を含めて把握するために C. trachomatis抗原陽性者ばかりでなく正常女子を含めた各年齢層の女性を対象に間接酵素抗体法により, 血清の特異的 IgG, IgA抗体価を測定し, その意義を検討した. 1) 0歳より68歳までの女子1,812例の平均抗体陽性率は IgG 29.7%, IgA 11.2%であり, 各年齢別にみると1歳以下の小児及び20〜24歳の性成熟期の二つのピークが認められ, 産道感染, 性行為感染の影響をよく反映していた. 2) C. trachomatis抗体陽性率は抗原陽性群 (139例)で IgG 84.2%, IgA 49.6%, 抗原陰性群 (792例)で IgG 24.5%, IgA 7.3%と, C.trachomatis抗原陽性群において有意に高かつた (p<0.01). 3) C.trachomatis抗原陽性群 (139例)において, IgG抗体陽性率は, PID, 頚管炎, 妊婦頚管炎, 卵管性不妊症の各疾患群間で差を認めず高値を示した (78.8〜90.9%)が, IgA抗体陽性率は腹腔内抗原陽性PIDにおいて100%であり, 頚管炎 (39.4%), 妊婦頚管炎 (37.8%), 卵管性不妊症 (45.5%)よりも有意に高かつた (p<0.01). 4) C.trachomatis抗原陽性群に対し, Minocycline, Doxycycline, Ciploxacin, Ofloxacinによる経口投与2週間の治療を行なつた結果抗原はほぼ前例において陰性化したが, IgG抗体価は初感染例においてのみ, また, IgA抗体価は初感染例, 治療前抗体価低値例, 頻回治療例, 比較的若年者の急性炎症例において低下, 及び陰性化した. 以上のことより, C.trachomatis血清抗体価の測定は, C.trachomatis感染の疫学的調査並びに診断の方法として重要であり, 病態の把握や, 初感染例などの治療効果の判定にも役立つ検索法であると考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1991-07-01
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