電子スピン共鳴法による赤血球変形能の測定およびその意義に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
正常妊娠時の水血症の意義, および妊娠中毒症(以下中毒症と略)における微小循環障害を, 血液流動学的観点から検討する目的で, その重要な因子のひとつである赤血球変形能について, 新しい方法である電子スピン共鳴法を用いて測定し, 以下の結果を得た. 1. 本法は測定感度がよく, 生体内に近い高ヘマトクリットでも, 再現性に優れた測定が可能であった. 2. 赤血球変形能は非妊婦に比較して, 妊婦では初期より有意に低下し, 以後妊娠の進行とともに漸減した. また中毒症では正常妊娠後期と比較した場合, さらに有意に低値を示した. 3. 正常妊娠時の水血症や中毒症における血液濃縮が赤血球変形能に及ばす影響について, 同一検体の血球でヘマトクリット, 細胞外粘度を変化させた実験モデルを作製し, 赤血球変形能を測定し検討した. その結果, 水血症では低下した赤血球変形能が, ある程度代償されるのに対し, 血液濃縮をきたす中毒症では, いっそう低下し重要な病態のひとつである微小循環障害の一因となっているのではないかと考えられた. 4. 赤血球変形能の改善を目的とした薬物であるα-tocopherol, isoxsuprineをin vitroにおいて添加し, その影響について検討した. その結果, これらの薬物は低下した赤血球変形能を改善することが判明し, 中毒症における微小循環障害を改善しうる可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1991-02-01
著者
関連論文
- 215 血液レオロジーからみた母児における微小循環機能の整合性とその異常
- 177 妊娠中毒症における過酸化反応とその防御機転, とくに赤血球形能からの検討
- 胎児, 新生児の血漿Tryptophanおよびその代謝産物の動態
- 434 電子スピン共鳴(ESR)法による中毒症妊婦の赤血球変形能測定に関する研究, 特に薬物による影響についての検討
- 154 トリプトファンおよび代謝産物の微量同時定量法の開発, および母児間における動態について
- 387 新しく開発した電子スピン共鳴法による妊婦の赤血球変形能に関する研究
- 電子スピン共鳴法による赤血球変形能の測定およびその意義に関する研究