周生期ラット胎仔における膵内分泌系の発達に関する研究
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概要
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胎児発育過程において胎児自身の膵内分泌系の役割を明らかにすることを目的として, ラットを用い, まず正常発育過程の膵のB, AおよびD細胞の形態計測および膵内分泌ホルモン (Insulin, GlucagonおよびSomatostatin) の血中濃度の測定を行いその変動を検討した。さらに, 実験的子宮内発育遅延仔において, 同様に膵内分泌細胞の形態計測および膵ホルモンの血中濃度の測定を行いその変化を比較検討し, 次のような結果を得た。1. 胎生期B細胞の体積比率は胎齢とともに増加する傾向を認めたが, A細胞の体積比率は著明な変動を示さなかった。出生後においてはB細胞, A細胞ともその体積比率は急増し, 生後3日目から5日目にかけてピークを形成した。D細胞は胎仔期にわずかに検出できるのみであり, その体積比率の変動は生後もB細胞, A細胞に比べれば小さかった。2. 血中Insulin濃度は胎生期に急増し, とくに胎生末期になると母獣のそれよりも高値を示すが, 出生とともに激減しadult levelに比べ低値を持続した。血中Glucagon濃度は胎生期しだいに増加し, 胎齢21日目にはほぼadult levelに達した。出生とともに血中Glucagon濃度は急増し著明なピークを形成し, 以後漸減したが, それでも新生仔期にはadult levelに比べ高値であった。血中Somatostatin濃度はInsulinやGlucagonに比べれば周生期を通じて著明な変動は示さなかった。3. 実験的子宮内発育遅延仔においては, 胎齢21日目の膵B細胞の体積比率が正常胎仔に比べ有意に減少しており, 血中Insulin濃度も正常胎仔に比べ有意に低値であった。逆に, 膵A細胞の体積比率には有意差がないにもかかわらず, 発育遅延仔における血中Glucagon濃度は正常胎仔に比べ有意に高値を示した。Glucagon/Insulinモル比でみると, 実験的子宮内発育遅延仔では対照群の約3倍の高値であり, 代謝的にcatabolismの亢進が示唆された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1989-04-01
著者
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