ヒト子宮内膜の糖脂質に関する生化学的研究 : 硫酸化糖脂質の発現とその月経周期における変化を中心として
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概要
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細胞の相互認識などに関与するといわれている糖脂質の子宮内膜および子宮体部腺癌由来株における組成を生化学的に分析した。子宮内膜には4種の中性糖脂質とガングリオシドおよび硫酸化糖脂質が主要な成分として検出され, これらの糖脂質のなかで硫酸化糖脂質であるスルファチドのみが, 月経周期の間に大きく変化した。すなわち, スルファチドの含量は, 増殖期では0.007〜0.017μmol/g dry weightであったのに対して, 分泌期では0.115〜0.245μmol/g dry weightと約16倍に増加した。また, 子宮体部腺癌由来株を含む女性***悪性腫瘍由来培養株の糖脂質分析から, 子宮体部腺癌由来株のSNG-IIとSNG-Mにのみ特異的に硫酸化糖脂質であるII^3Sulfo-LacCerとII^3Sulfo-Gg_3Cerが認められ, またSNG-IIの硫酸化糖脂質の合成酵素である硫酸基転移酵素の存在も確認され, そのKmは約60μMであった。しかし, 子宮体部腺癌以外の癌組織から樹立した細胞株には硫酸化糖脂質は全く認められなかった。したがって, スルファチドの合成に必要な硫酸基転移酵素の活性が性ステロイドホルモンにより誘導される可能性が示唆された。以上の結果から, 子宮内膜には特徴的な糖脂質として硫酸化糖脂質が存在し, また子宮体部腺癌由来株は子宮内膜における硫酸化糖脂質の代謝や機能を検討する上で有用な細胞であることが示唆された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1989-04-01
著者
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