子宮頸癌のMRI進行度評価と予後に関する検討
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概要
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MRIは全進行期を通じて, 同一の基準で客観的に頸癌の進行度を評価しうる優れた検査法である.本研究では, より適切な治療法選択へのMRI応用の基礎として, MRI所見と予後ならびに再発形式の関係について検討した.対象は5年予後の判明した110例(手術75例, 放射線単独治療35例)とした.MRI stagingは日産婦進行期分類に準拠したが, 膀胱・直腸方向については頸部と膀胱・直腸間の結合織に癌が及ぶものをIIb期相当, 膀胱・直腸筋層に及ぶものをIIIb期相当と規定して評価した.ほかに腫大リンパ節抽出の有無と再発の関係についても検討した.まず頸部high-intensity area (HIA)抽出の有無については抽出69例中26例(38%)に再発をみたのに対し, 非抽出41例に再発はなく, 有意に(p<0.0001)良好な予後を示した.次に手術例75例について術後進行期とMRI stagingならびに臨床診断を対比した.正診はともに51例(68%)であったが, 過大評価はMRIの5例(7%)に対し臨床診断で16例(21%)と多く, 過小評価はMRIで19例(25%)と, 臨床診断の8例(11%)より高頻度に認められた.110例全例で両者の進行期が一致したのは70例(64%)であった.MRI IIa期までの67例中2例(3%)に対し, MRI IIb期以上では43例中24例(56%)と再発が有意に(p<0.0001)高頻度であった.MRI IIb期では手術例12例の局所再発6例, 遠隔再発2例に対し, 放射線治療例では10例中局所再発1例のみと, 治療法による差異が認められた.遠隔再発はMRI IIb期までの再発11例中2例(18%)に対し, MRI IIIb期以上の再発15例では9例(60%)と, 有意ではなかった(p=0.0835)が, 後者に高頻度に認められた.リンパ節については, 腫大陰性95例の再発15例(16%), 遠隔再発3例(3%)に対し, 腫大陽性15例では再発11例(73%), 遠隔再発8例(53%)といずれも有意に(p<0.0001)高頻度であった.これよりMRI IIIb期以上例やリンパ節腫大例では全身化学療法も含めた遠隔再発への対策が予後改善に有用である可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1998-12-01
著者
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