母体運動による胎児心機能変化に関する検討
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概要
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母体運動中, FHRは増加することが知られている.しかし, それに伴う胎児心機能の変化は明らかではなく, 持続する頻脈は胎児心不全の原因の一つにもあげられている.そこで, 母体運動中のFHR増加が胎児心機能に与える影響を明らかにするため, 超音波断層法による心機能計測を行い, 生理的な検査として広く臨床応用されているvibro acoustic stimulation test(VAST)によるFHR増加が, 心機能に及ぼす影響と比較し検討した.対象は妊娠30週から36週の正常妊婦31例で, 軽度から中等度の母体運動を行ったexercise群15例, VASTによる心拍増加例16例(VAST群)に分類した.超音波断層法による胎児心機能の観察はM-mode法を用いFHR, ejection time, filling time, 拡張末期, 収縮末期の左右心室短軸径を測定, pombo法にてstroke volume(SV), cardiac output(CO)を求めた.測定は母体運動ならびにVAST前後に行い, 前値をcontrolとした.その結果, 両群ともFHRは15〜20bpm増加し, ejection timeは変動せず, filling timeは有意に短縮した(p<0.05>.VAST群ではfilling timeの減少により, 左室でSVが低下し(p<0.05>, COに変化を認めなかった.しかし, exercise群では両心室でSVに有意な変化はなく, COは心拍数に依存し増加した(p<0.05>.これらの所見は, VASTではFrank-Starling mechanismにより予測されるSVの減少を伴ったfilling timeの短縮が出現するものの, exerciseではそのmechanismが出現しなかったことを示している.これらの相違は, 異なる強度の成人運動で観察される心室機能変化と類似し, 発育過程にある胎児の心室機能が成人と大きな相違がないことを示すものと考えられた.また, 今回行った運動刺激によるFHR増加が, 極端なfilling timeの短縮による心収縮力の低下を招くことなく, 生理的な範囲のものであることが推察された.
- 1998-10-01
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