密度ゆらぎから宇宙の大域的構造へ
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概要
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銀河は, 星の誕生, 進化, 死に代表される主要な天体現象の場であり母体であると同時に, 宇宙全体のスケールから見る時, 宇宙の物質分布の基本単位としての役割を果たす. この意味で, 銀河は宇宙における諸天体の中で最も基本的かつ中心的な天体であり, 銀河の形成過程やその大域的な分布(宇宙の大域的構造)の起源を明らかにすることは, 宇宙論における最も重要な問題の一つである. 従来, 銀河形成のシナリオとしては, 重力不安定説, 即ち宇宙初期に存在した微少なゆらぎから重力不安定によって銀河及び宇宙の大城構造が作られるという考え方が最も有力なものとされてきた. ところが, 宇宙の大域的な構造に関する観測の最近の急速な進歩により, このシナリオと観測との詳しい定量的比較が可能になるにつれ, この考え方は大きくぐらつき始めている. 本稿では, 重力不安定説を中心に, 銀河形成論の概要とそれが現在遭遇している困難を, 膨張宇宙における大域的な密度ゆらぎの時間発展という視点から解説する.
- 社団法人日本物理学会の論文
- 1988-03-05