最大下運動における網膜血管径の変化
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概要
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運動時の末梢循環系反応を明らかにする目的で, 本研究では眼底血流を手がかりとして脳血流の変動傾向を観察しようとした。眼底写真撮影は無散瞳眼底カメラにより, 安静時, 運動時および回復時のうちから5位相をえらんだ。網膜血管径は, 上耳側動静脈径および下耳側動静脈径を, 乳頭縁と動静脈血管の交点上で計測し, 乳頭径との比であらわした。また同時に心拍数と上腕動脈血圧を測定した。運動の負荷強度は各被検者の2/3V^^.O_<2max>とし, 負荷時間を30-40分とした。被検者には, 若年者として平均年齢24.1歳の男子16名, 中高年者として平均年齢50.8歳の男子9名をえらんだ。運動により網膜血管径はいずれも増加し, 運動20分時に最大となり, 若年者では平均5 -21%の増加率を示した。しかしその後は, 運動継続にもかかわらず漸減傾向を示し, 運動終了後20分を経て安静時レベルに復した。中高年者でもほぼこれと同様の傾向を示したが, 若年者に比し, 運動による網膜血管径の増加率は小さかった。この網膜血管径の増加は, 運動時の収縮期血圧変動と関係があり, 収縮期血圧が176mmHg以下の範囲では両者に有意の正相関を認めたが, それ以上の血圧値に達するとこの関係は消失した。網膜血管においては血管壁がほとんど透明で, 血管と称するものの主体は血柱であることが知られている。すなわち血管壁が伸展されるときは, 血圧が上昇したときおよび血流量が増加したときで, したがって網膜血流の動態が脳血流をよく反映するという説にしたがうならば, こうした運動時における網膜血管径の増加は, 血圧上昇をともなっていることでもあり, わずかながら脳血流量の増加を示唆するものではないかと考えた。
- 1981-12-01
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