スプリンターのパワー発現

概要

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100m10秒台と11秒1,11秒3の最高記録をもつスプリンターとほぼ同年齢の一般学生を対象にして,モナーク社製自転車エルゴメーターを用いて,1)軽い負荷から重い負荷までの8種類の負荷の運動で発現されるパワーと,2)最大パワーを発現する6秒間の運動を一定時間の休息をはさんでスプリンターには10回,一般学生には9回反復させた時のパワーを測定し,スプリンターのパワー発現特性を探求した。(1)3,4kpの軽い負荷の運動で発現されたパワーの最大値には,スプリンターと一般学生と、の問にそれほど大きな差異はみられなかった。しかし,5,6,7kpと負荷が重くなるにつれて,両者のパワーの最大値には大きな差異がみられた。100mに10秒台の記録をもつスプリンターは7〜8kpの負荷で最大パワー(90.1〜105.8kgm/sec)を発現し,一般学生は5〜6kpの負荷で最大パワー(62.1〜85.2kgm/sec)を発現した。(2)スプリンターは一般学生に比べて重い負荷の運動でスピードにまさっており,このことが両者の最大パワーに大きな差異を示す原因になっていることが明らかになった。(3)スプリンター5名と一般学生6名の最大パワーの値は,ほぼ一直線上に位置したが,スプリンター2名はこの直線上に最大パワーが位置せず,左側に位置し,パワー発現に特性が認められた。このスプリンター2名は,他の被検者に比べて軽い負荷の運動でスピードに特にすぐれており,パワー発現特性にスピードの要因がすぐれていることが原因しているように思われた。(4)スプリンターでほぼ同じ100mの最高記録をもっている者でも,最大パワーを発現する負荷にも,最大パワーの値にもかなりの個人差がみられた。これらのことは,最大パワーはスピードの要因と力の要因が関係し,比較的スピードの要因の方にすぐれている者と比較的力の要因の方にすぐれている者がいるためであることが明らかになった。また疾走能力はパワー発現能力のみならず,疾走技術にも大きく関係していることが示唆された。(5)スプリンターの最大パワーは,一般学生のそれよりも20〜30kgm/sec大きいものの,1分間の休息をはさんで10回反復させた結果は,一般学生と全く同じような割合でパワーが低下し,特に5回目以降のパワーの低下の割合が大きい者がおり,それには個人特性が認められた。(6)その個人的特性には,1)1回目の運動から4回目の運動まではパワーの低下がそれほど顕著でないが,5回目以降のパワーの低下が顕著になり,特に4秒から5秒のパワーの低下に比べて5秒から6秒までのパワーの低下が顕著な者,2)1回目の運動から10回目の運動までのパワーの低下が比較的小さい者,3)1回目の運動から4回目の運動までのパワーの低下がそれほど顕著でないが,5回目以降パワーの低下が顕著になり,特に3秒から6秒までのパワーが全体的に顕著に低下する者,の3つのタイプが認められた。
1980-09-01

スプリンターのパワー発現

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