水泳における浮くためのエネルギーと推進のためのエネルギーの男女比較
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概要
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Body fat lessens underwater body weight and may offer an advantage for swimming performance. The present study was undertaken to measure separately V̇O2 for buoyancy and that for propulsion during swimming in the swimming flume and to elucidate the advantage of lower underwater body weight in female.Three male swimmers and three female swimmers participated as the subjects. V̇O2 was measured during free style swimming at a constant speed of 0.6, 0.8 and l.0m/sec.Underwater weight was increased stepwisely by loading an extra-weight around the subject's waist or decreased by suspending a weight which pulls the waist upward via a wire and pulleies. V̇O2 at a given speed depended proportionally on the underwater weight. V̇O2 for propu1sion was estimated by subtracting resting V̇O2 from the intercept on the ordinate, and V̇O2 for buoyancy was calculated from the slope.1) V̇O2 for buoyancy was independent of swimming speed and the average value for female swimmers was much smaller than that for male swimmers (352±140m1/min for male, 186±83m1/min for female). This difference in V̇O2 for buoyancy depended largely on the difference in underwater weight as the calculated values of V̇O2 for buoyancy per kg of underwater weight revealed much smaller difference between sexes (117±46m1/min for male, 91±36m1/min for female).2) V̇O2 for propulsion increased exponentially with increasing speed. The increasing rate was larger in female than in male. This is probably because of relative inferiority of swimming ability in the female group in this study.3) The rate of propulsion V̇O2 to total V̇O2 during swimming was larger in female than in male. This represents the advantage of lower underwater weight in female for swimming. This result offers the probable explanation for the discrepancy which exists in male-female ratio of the world records between swimming and running.体脂肪は人体の水中体重を小さくするから, 水泳には体脂肪の多いことが有利な条件となる可能性がある。本研究は水泳の際に浮くために使われるV̇O2と推進のために使われるV̇O2を測定し, 水中体重の大小が実際の水泳にどれほどの影響を与えているかという点について検討したものである。男女各3名, 計6名の泳者に, 泳速が0.6, 0.8及び1.0m/secのクロール泳を行わせ, V̇O2を測定した。その際腰に錘をつけて水中体重を増加させ, あるいは滑車を介した錘で腰を引き上げるようにして水中体重を減少させ, 各水中体重において上記の測定を行った。V̇O2値を水中体重に対してプロットすることによって得られる回帰直線の勾配から浮くためのV̇O2を, またY切片から安静時V̇O2を差し引くことによって推進のためのV̇O2を求めた。1 浮くために必要なV̇O2は泳速とは無関係であり, その平均値は男子の方(352±140ml/min)が女子のそれ(186±83ml/min)より有意に大であった。この差は水中体重に大きく依存していて, 単位水中体重当りに換算すると男女の値は接近した(男子: 117±46ml/min, 女子: 91±36ml/min)。2 推進のために用いられるV̇O2は, 泳速の増加に伴って指数関数的に増大した。その増加率は男子よりも女子の方が大であったが, それは女子の水泳能力が男子のそれより劣ることに関連していると考えられる。3 総V̇O2に対する推進のためのV̇O2の割合は, 男子よりも女子において大きく, この点女子の水中体重の小さいことは水泳において有利な条件になっている。男子の世界記録に対する女子のそれの比率は, 競泳の場合には競走の場合より大きいが, この差は女子の体脂肪の多いことが水泳では有利に作用していることに由来するものと考えられる。
- 1983-06-01
著者
-
野村 武男
筑波大学体育科学系
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黒川 隆志
筑波大学体育科学系
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池上 晴天
筑波大学体育科学系
-
重枝 武司
福岡県筑前高等学校
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久山 順子
神奈川県相馬中学校
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後藤 慎二
筑波大学体育科学研究科
-
黒川 隆志
筑波大学体育科学研究科
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