触運動的知覚学習に関する実験的研究 : 点字学習形式についての一考察
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概要
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以上のように実験結果に対する考察と先に行たった実態調査の結果とを関連づけながら点字の学習形式を中心として問題へのアプローチを試みてきたのであるが,それらの結果は次のように要約されよう。(1)Exp.4すなわち言葉への意味づけの方法は青年に適し,児童てばよい結果が得られない。これは"意味づけ"が抽象的であって論理的な思考を必要とすること,その間の関連づけを行なうために一複合的た連想を必要とすること等から発達的により高い段階にある被験者に有効であると解せられる。(2)Exp,5すなわち規則性教示の方法は4つの実験方法の中では平均して最もよい結果が得られたが,それは"読み"と"書ぎ"の間の移行が容易にできたことにもとづく。したがって規則一性を積極的に利用して合理的。自主的にそれを活用していこうとする態度によって効果的にたる。その際に触弁別閾および"読みの速さ"のすく"れていることが望ましく"読み"と"書き"の並行学習によって両者が相互補足的に関連性をもって学習されていくことが必要である。(3)Exp.6すたわち単語としての形態の方法は"読み.'の面ではきわめて容易で全被験者にとって能率的である。しかし個々の文字の"読み""書ぎ"のできることを目標とする場合には移行の点で非常た難点があり"読み"で全体形の把握と同時にその部分構造の認知ができるようた場合でたいとよい結果は得られない。Lたがって一般に行なわれている単語形態学習も移行の点からの検討を要すると考えられる。(4)Exp.7すなわち各回1字ずつの自主的弁別の方法はとくに児童にとって有利である。それは図と地の関係において新出文字がより明確に示されることによって各文字間の混同が避けられ,また被験者のモティベーションおよび学習後の反復練習の効果にもとづいている。また個人的条件にあまり影響されることなく平均化した結果が得られやすいので初歩的段階における一般的な方法であると考えられる。この際に学習形式としては"読み"から入ることが容易で,学習量を16字ぐらいとした場合には"書き"への移行も比較的容易である。しかしこの学習量についてはなお研究の必要がある。以上のように類型化することができ'ると考えられるが,これをさらに概括的にまとめることが許されるならば,次のようになるだろう。(1)児童にとっては被験者の興味とモティベーションを考慮したうえで部分的た自主的弁別の方法が比較的容易で望ましい。その際に規則性もある程度学習の能率化と効果をもたらす。また文字はその形が安定した簡単な構成の文字から行なうことが弁別を助ける意味で望ましい。(2)青年にとっては,規則性の構成原理の教示を行ない被験者の意味づけを利用した方法が望ましい。規則性教示の方法については調査の結果と一致している。しかしながら,いずれにおいても"読み"と"書き"の移行が学習能率を規定する第1の要因であると考えられる。したがってその移行ができ一るという前提に立ではExp.6の単語形態の学習がきわめて能率的になりうる。全国実態調査の結果とはかたらずしも一致せず個人的なタイプの考慮においてさらに実験的た研究が残される。
- 1960-12-30
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