転換学習に関する研究II : 先行学習の訓練量をより広範囲に変えた場合
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
弁別事態における転換学習については先行強化数が多いほどそれに対立的な後行学習が容易になることが最近の研究によって示されているが,これはHu11-Spence流の強化理論からの予想とは矛盾するものである。これに対して従来の研究著は学習の構え(leaming set)ができ強化の型の弁別が容易になること,あるいはこれに類似したReidの「弁別する反応」という因子によって説明している。著者らは先の研究(3)においてこのような強化数に伴なう後学習の容易さの一義的な増加ということに疑問を持ち,児童を用いて実験したところ,ある臨界点があってその点までは強化試行の増加につれて学習の転換が困難になりその後は逆に容易にたることが明らかになった。これは従来の結果のようにleaming setの要因のみでは説明できなく,そのために著者らは学習が十分に完成するまでの段階において主に作用する従来の強化説に基づく「特殊な刺激に対する反応」因子と学習完成後に主に作用する具体的な刺激とは関係のない態度的なものとしての「弁別する構え」の2つの因子を仮定して説明した。さらにこの転換学習の問題は弁別学習における連続-非連続論争とも連関するものであり,もしKrechevskyの仮説の概念が正しいならぱ学習の初期においてはこの仮説を考慮に入れなけれぱならないことを先に暗示した。先の研究結果は統計的有意性が得られなかったので本研究においては前学習の強化試行をより広範囲にわたって変化し,異なった被験者と課題によっても先に述べた傾向が一般的にいえるかどうかを吟味しようとした。被験者は15才から19才までの収容少年で課題は大きさ,色,位置の3つの次元をもつものであった。前学習(大きさ学習)の基準を連続正反応3回,6回,10回,10回十20回,10回十40回とする5つの実験群を作りそれぞれの学習基準に達するとただちに後学習(色学習)へ転換させた。これとは別に前学習がなくて後学習のみを行なう統制群を作った。各群は10名ずつである。結果は予想どおりであって臨界点の存在が認められ,しかも群間には統計的な有意差が得られた。両学習における学習課程を比較すると全学習では連続5回正反応の段階が一応学習完成の点とみられそれ以後は過剰学習であることがわかり,このことは後学習でその群(5回連続正反応基準)の学習が最も遅くそれ以後は早くなっていることと対応している。後学習の早い群ではほぼ連続3回正反応によりすでに新しい反応原理を習得しているが,遅い群では連続5回正反応の基準に達してもなお誤反応をくりかえし連続10回の学習基準にはなかなか達しないのである。ここに全学習の過程との相違が認められる。連続的固執反応はわずかしか認められず群差はなかったが,固執的誤反応率でみると後学習の早い群において高い値が示され,これは誤反応率とも同じ傾向であってこれらの学習の早さとは逆の関係であった。また最低基準の連続3回正反応群と統制群の間には有意差はなかったが前者において後学習への負の転移がかなりあらわれ「仮説」の概念は適用されなかった。以上の結果から著者らは弁別事態において作用する2つの因子の過程を支持して学習課程を吟味し,従来の研究が臨界点以後のみを扱っているという欠点を指摘した。さらに「弁別する構え」の形式に伴って強化試行が増加すると学習事態への飽きが加わり,新しい反応の手がかりが容易に把握できるような状況を作っているかもしれない。ということについて言及した。
- 1959-12-30
論文 | ランダム
- 楽しい理科授業への模索-5-小学校における「生命の連続」に関する指導上の問題点とその改善
- 静脈管依存型チアノ-ゼ性心疾患に対するPGE1の経直腸投与の経験
- ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程 : インタビュー活動からカウンセリング活動へ
- ホーソン実験についての近年の諸論調 : 1990年以降における諸論調を中心に
- ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程--インタビュー活動からカウンセリング活動へ