聴覚障害児における図形の意味性の効果(1) : 仮現運動視の発達に関する研究(III)
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概要
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本研究は,聴覚障害児の仮現運動視における意味性の効果を検討し,その結果を筆者が以前に正常児について得た結果と比較し,.さらに意味性の効果を規定ナる条件について考察したものである。FlG.1に示された5つの図形(「円」,「方向性のない三角形」,「方向性のある三角形」,「静止中の馬」,「運動中の馬」)の仮現運動視の成立をろう学校小学部1・2年生,同4・5年生,中学部1・2年生(各群とも10名)の3被験群において調べた。測度は最適運動時相の下限値,範囲値,上限値の3つであった。仮現運動視の成立に関して,下限値では,年齢間の差,図形間の美とも有意でなかったが,範囲値と上限値とでは,両者とも有意であった。範囲値と上限値で得られた結果の大要は次のとおりである。(1)どの図形においても,正常児ほと顕著ではないが,年少群ほど仮現運動視は成立しやすい。(2)動的な図形ほど仮現運動視は成立しやすい。すなわち「方向性のある三角形」は「方向性のない三角形」や「円」よりも,また「運動中の馬」は「静止中の馬」よ.りも,それぞれ仮現運動視は成立しやすい。しかし,聴覚障害児におけるこの意味性の効果は,正常児の意味性の効果と比較するときわめて小さい。(3)被験児を幼稚部教育を受けた群と受けなかった群に分けると,後者においては図形間に有意な差は認められなかったが,前者においては,「運動中の馬」が「静止中の馬」よりも有意に仮現運動視が成幸しやすかった。聴覚障害児の仮現運動視において意映性の効果が顕著でないのは,彼らの図形の意味の把握が未分化だからではないかと考察された。そして知覚に図形の意味性が有意な効果を及ぼすには,知覚者の図形の意味の明確な把握ということが1つの条件ではないかということが示唆された。
- 日本教育心理学会の論文
- 1972-12-31
著者
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