沖縄県石垣島白保サンゴ礁海域における赤土堆積量の時空間的分布について
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概要
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サンゴ礁環境へ影響を及ぼす要因の一つである土壌流出に関して,沖縄県石垣島白保サンゴ礁礁池における赤土堆積状況を把握するため,礁池内に32定点を設置し,底質中懸濁物質含量(SPSS)を調べた.2000年8月から2003年5月までの3年間,3ケ月に1回の頻度で試料採取を行った.礁池内全体の3年間のSPSS平均値は14.8 kg/m^3で,一年ごとの年対数値の平均値に有意な差はなかった.海岸線(12定点),礁池中央(10定点),礁嶺(10定点)領域ごとのSPSS平均値は,陸域から離れるほど減少する傾向があった.礁嶺領域の定点群のSPSS値については,轟川河口の北東部に位置するモリヤマグチ(礁嶺の切れ目)に近い1定点の3年間の対数値の平均が他の9定点中7定点より有意に高かった.赤土の主要な流入源と考えられる轟川の河口およびその北側周辺の4定点では,SPSSの3ケ年平均値が50kg/m^3以上であり,人為的な影響を受けていると考えられる堆積が恒常的に続いていることが確認された.これら4定点の季節毎の平均SPSS値は秋にもっとも大きく,冬から夏にかけて減少する傾向が見られた.礁池全体では季節毎の堆積量に有意な差はなかった.白保礁池に堆積する赤土は,主に夏から秋(8-10月)にかけて集中する降雨により轟川から流入するものと思われる.赤土は,海岸線付近,特に河口北側周辺に偏って堆積する傾向が高く,人為的流出による恒常的な堆積がサンゴ礁生態系に負の影響を与えているものと推察される.赤土の堆積分布から推測すると,河口からの距離,クチなどの地形や底質状況が拡散・堆積・再懸濁に影響を与えているものと思われる.河口北側周辺の赤土は秋以降に徐々に減少することから,河口北東に位置するモリヤマグチから恒常的に排出されている可能性が高いと考えられる.
- 2004-12-25
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