Wxタンパク質を欠失した普通系コムギにおける糯性の遺伝
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概要
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胚乳澱粉のアミロース合成に関わる酵素であるwaxy(Wx)タンパク質を削除した普通系コムギにおいて精性形質が後代へ遺伝するかを検討した.コムギにある三種のWxタンパク質のうちWx-A1とWx-B1タンパク質を同時に欠いた関東107号および西海173号とWx-D1タンパク質のみを欠いた中国品種の自火を交配し,Wxタンパク質を含まないF_2種子を得た.この個体に由来したF_3およびF_4世代の種子胚乳および花粉はヨード・ヨードカリ液で染色すると赤褐色に染まり,嬬性を示した.また,Wxタンパク質は電気泳動法で検出されず,その欠失を確認した.オートアナライザーによってアミロース含量を分析したところ,O.6%(F3種子),O.7%(F4種子)であった(Table1).さらに,糊化した澱粉をヨード・ヨードカリ液で呈色させた時の吸収スペクトルは梗コムギである農林61号とまったく異なった.すなわち,λmax(最大吸収波長)と青価(blue value)は農林61号に比べて大きく減少しており(Table1),アミロース含量の激減が明らかとなった.以上のことから,Wxタンパク質を削除したコムギにおいて嬬性すなわち胚乳澱粉中におけるアミロースの欠如は後代へ安定して遺伝することが判明した.作出された橋コムギはコムギ紛澱粉組成の遺伝的改変へ向けた新たな一歩となると期待できる.
- 日本育種学会の論文
- 1995-09-01
著者
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山守 誠
国際農林水産業研究センター
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長峰 司
国際農林水産業研究センター・沖縄支所
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Yamamori Makoto
国際農林水産業研究センター沖縄支所
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Nakamura Toshiki
東北農業試験場
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Nagamine Tsukasa
国際農林水産業研究センター沖縄支所
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Nagamine Tsukasa
国際農林水産業研究センター沖縄支所:(現)農業生物資源研究所
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