養液栽培におけるバラの多量要素吸収とその季節的変動
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概要
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ノイバラ実生台木に切り接ぎした'ソニア'の接木苗を用いて水耕栽培を行い, 園試処方第1例培養液の高濃度と低濃度の2水準の濃度区を設定して多量要素の吸収濃度とその季節的な変化を周年にわたり調査した.バラの生育は最終ピンチを行った8月上旬までは, 培養液の濃度による差はなかったが, 切り花本数, 品質は高濃度区の方が優れた.培養液のpHはいずれの調査期間についても調査終了時には開始時よりも上昇し, その傾向は高濃度区に比べて低濃度区で顕著であった.培養液のECは高濃度区の高温期に著しく上昇し, 低濃度区においても5月から10月にはEC 2.0 mS・cm^<-1>程度まで上昇した.吸収濃度の年間平均値は高濃度区がNO_3^- 7.2, H_2PO_4^- 3.3, K^+ 2.7, Ca^<2+> 4.2, Mg^<2+> 1.2, SO_4^<2-> 1.0 me・liter^<-1>, 低濃度区はNO_3^- 6.5, H_2PO_4^- 2.1, K^+ 1.8, Ca^<2+> 3.0, Mg^<2+> 0.9, SO_4^<2-> 0.6 me・liter^<-1>であり, 高濃度区の吸収濃度が高かった.各要素のみかけの吸収濃度には季節による変動が認められ, すべての要素の吸収濃度が低温期に上昇して高温期に低下し, 他の期間はその中間の濃度で推移した.吸収濃度の変動幅はNO_3^-が最も大きく, 高温期の吸収濃度は低温期のそれの44%(NO_3^-)から56%(K^+)であった.以上の結果からバラの養液栽培における根圏培養液環境の安定化には, 供給する培養液の組成だけでなく, みかけの吸収濃度の季節変動を考慮した培養液管理の重要性が示された.
- 園芸学会の論文
- 1998-01-15