富山県における奨励品種決定試験データを用いた水稲品種選定の場の特徴
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概要
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富山県における水稲奨励品種決定試験(奨決試験)の場所は,気象,土壌条件などに特徴を持つ県内10数カ所に設置されているが,品種反応を通した詳細な考察はあまりされていない.ここでは品種選定の場の適否を検討すること,および選抜の場の活用を図ることを目的として,まず数年にわたる奨決試験データをまとめて分析し,各場所における選抜や選定の場に関する新たな知見を引き出し得ることを示した.奨決試験の1961年から1O年間のデータを3期に分けて共通な品種と場所を抽出し,13〜14試験地収量の<品種・系統〉・年次による変動を解析した.各期ごとの2元配置分散分析の結果から場所ごとに分散成分と遺伝率を求めたところ,収量の遺伝率の高低は平均収量の多少とはあまり関係のないことを認めるとともに,1期がそれ以上の期において黒部,婦中,戸出,小矢部,氷見,滑川,福野が高い遺伝率を示した.次に回帰分析(回帰係数の高低),主成分分析(主成分スコアの大小),クラスター分析(類似度合)により求めた指標から,各場所の傾向を検討した結果,安定性(または変動性)の面からみて顕著な反応を示す場所を見いだした.また,回帰係数や第1主成分スコアは年次分散と有意な相関をもち,年次の影響が大きいことがわかった.以上の結果から,品種・年次の反応を通した場所の傾向を各種の指標などから明らかにし,そのうち,遺伝率が特に高い黒部,婦中,氷見,福野,年次分散が特に大きい入善,回帰係数が特に小さい戸出,八尾および回帰係数が特に大きい滑川,高岡を見いだした.これらの特徴から,育種目標に応じた環境条件を選び,雑種集団を養成,選抜することにより目的とする変異体を効率的に作出できると思われる.また,本報で用いた分析方法は,他県や他作物でも利用が可能と思われる.
- 日本育種学会の論文
- 1994-06-01