日本列島および日本海上の経年気候変動に及ぼす冬季季節風の影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
季節風の吹き出しは冬季日本および日本海の経年気候変動をもたらす最も重要な要素の一つである.本研究は, 現在入手可能な船舶, 地上, 衛星観測データを用いて, 冬季季節風変動の影響を総合的に調べたものである.日本冬季降水量の変動パターンは日本海側と太平洋側とに分かれており, 季節風が強い年には日本海側で降水量が多く, 太平洋側では逆に少なくなる.一方, 日本海上の降水量, 水蒸気量はともに季節風が強いときに減少していることが衛星データを用いた解析から示された.しかし, 日本列島に近付くにつれ雲水量が増加しており, 日本海側で降雪量が増えていることが示唆された.また, 季節風の強い年に海面水温(SST)が低くなるという影響は日本海南部(40°N以南)のみにしか現れず, 北部においては季節風よりも海洋の内部変動による影響が大きい.このようなSST変動の南北相違は日本の気温にも現れており, 全国的には季節風と地上気温とが有意な負相関を示すものの, 北日本では相関係数が小さくなっている.以上のように, 40°N以南の日本海・日本列島上の気温変動が2〜3年周期を持つ季節風の強弱に強く影響される一方で, 10年スケールの変動が北日本に見られることも分かった.後者の変動要因に関する詳しい解析は今後の課題である.
- 1998-10-31
著者
-
謝 尚平
ハワイ大学国際太平洋研究センター・気象学教室
-
松村 伸治
北大院地球環境
-
謝 尚平
北海道大学大学院地球環境科学研究科
-
松村 伸冶
防災科学技術研究所
-
松村 伸治
北海道大学大学院地球環境科学研究科
関連論文
- B164 東シベリアの融雪水効果による夏季北ユーラシア大気陸面相互作用(スペシャル・セッション「異常気象と低周波変動」,口頭発表)
- 半球スケールの準10年振動とその北日本への影響
- 北海道冬季気温に見られる準10年振動 -北半球スケール変動の一部として-
- 熱帯気候の南北非対称性の形成に関わる大陸強制
- 亜熱帯域夏期気候レジームの形成に関する数値的研究
- 環大西洋における大気海洋変動
- 環大西洋の大気海洋相互作用場における10年スケール変動
- 日本列島および日本海上の経年気候変動に及ぼす冬季季節風の影響
- 1993年7月の季節再現実験
- 南半球の準10年振動の影響と強制力
- 理想化海陸分布を持つ大気大循環モデルに現れる夏期モンスーンの急な開始およびその季節進行
- 理想化した境界条件における夏季アジアモンスーンのシミュレーション
- 熱帯気候の南北非対称性の形成に関わる大気海洋相互作用 : 1996年度山本・正野論文賞受賞記念講演
- 国際海洋物理学協会総会報告
- 「TOGA95」参加記
- 大西洋の10年スケール変動における大気・海洋,熱帯・中緯度相互作用 (総特集 大規模大気海洋相互作用--数十年スケール変動の実態と機構) -- (2章 大西洋セクターにおける長期変動)
- C207 オホーツク海高気圧における大気-陸面結合の役割(気候システムII,一般口頭発表)
- C206 北海道における土地被覆変化と地域気候影響の理想化実験(気候システムII,一般口頭発表)
- A365 雪氷変化による北海道の将来気候への影響(気象システムIII,,一般口頭発表)
- D311 シベリアの土壌凍結-融解過程による気候メモリ(気候システムII,口頭発表)
- A105 ユーラシア積雪変動に対する夏季大気循環の応答(気候システムI,口頭発表)