本州中部を通過する寒冷前線の地形による変形
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概要
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本州中部の太平洋側の関東地方,東海地方では,寒冷前線が日本海側から下りてくるとき,本州中部の地形の影響により風,気温,降雨が複雑な変化をする.今回は10kmの格子間隔のモデルを用いて,1991年4月18日に寒冷前線が本州中部を通過したときの,地形効果について調べた.寒冷前線通過に伴う寒気流入は,地形の影響で,3つの主要な経路に分かれておこることが確認された.それは,(A)若狭湾から関ケ原を経て伊勢湾に抜ける経路,(B)東北地方の東海上から関東地方に北東風として吹き込む経路,(C)中部山岳地帯の谷筋を抜けて三国峠から関東地方に入る経路,である.(A)の経路の寒気は,東海地方に西よりの風として吹き込む.(B)は関東地方の大部分への寒気の流入をおこす.(B)の寒気は関東地方から伊豆半島,東海地方東部に入り込み,(A)の寒気の東端との間でシアーラインを形成する.このような寒気の分流により,風や気温の時系列に複雑な変化が現われる.東海地方から伊豆半島,新島,三宅島などでは,最初に関ケ原からの寒気が到達し,気温の低下が見られるが,風向は西寄りあるいは南西寄りで暖域内の風向と大きな変化はない.そのあと,(B)の寒気が入り,風向は,東あるいは北東寄りへと大きく変化するが,温度変化は小さい.降雨パターンも地形により変形される.関東地方では,実況で,前線通過時に降雨がほとんどなかったが,これも中部山岳の影響であることが確認された.関東地方の大部分を(C)からの寒気がおおい,この寒気の前面には,広範囲にわたる降雨域は見られない.その後に,3つの寒気の南端は海上で一つの寒冷前線を形成し,降雨のない関東地方をジャンプしたように見える.
- 1993-08-31
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