2次元大気輸送モデルと地表面濃度の観測値から導出したメタン放出量
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概要
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1983年から1994年にNOAA/CMDLネットワークにおいて観測されたCH_4濃度を2次元大気輸送モデルを用いて解析し、CH_4放出の緯度分布および時間変動を推定した。モデルの大気輸送は^<85>Kr、CFC-11、CFC-12、CO_2濃度をシミュレーションすることにより検証した。CH_4の消滅源としてはOHラジカルとの反応を考慮し、3次元光化学モデルから導かれた経度平均のOH場をCH_3CCl_3によって検証して用いた。CH_4放出量の平均的な緯度分布は大きな南北勾配を示し、全体の75%が北半球で放出されるという結果が得られた。北半球高緯度でのCH_4放出は、夏に最大値に達する季節変動化を示した。一方、南半球においては明瞭なCH_4放出の季節変化は見られなかった。1984年から1994年の平均的な全球のCH_4放出量は559±9Tg/yr、化学消滅量は528±10Tg/yr、大気増加は31Tg/yrであった。モデルから得られた結果の感度試験を行ったところ、CH_4の全球放出量はOH濃度と温度に敏感であるが、使用する大気輸送係数とCH_4濃度の観測値の違いによる影響は小さいことが判明した。CH_4放出の緯度分布は水平方向の大気輸送係数に大きく依存することも分かった。また、大気中CH_4のδ^<13>Cの分布にとって、放出量の大部分を占めるバクテリア起源のCH_4のδ^<13>C値と同位体分別効果の大きい土壌吸収が重要であることが示唆された。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1998-04-25
著者
-
中澤 高清
東北大学大学院理学研究科
-
HIGUCHI Kaz
Meteorological Service of Canada
-
田中 正之
東北大学大学院理学研究科大気海洋変動観測研究センター
-
佐伯 田鶴
総合地球環境学研究所
-
Higuchi Kaz
Carbon Cycle Research Laboratory Atmospheric Environment Service Downsview
-
佐伯 田鶴
東北大学大学院理学研究科大気海洋変動観測研究センター
-
Higuchi Kaz
カナダ大気環境庁
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