ツバキ属栽培種における細胞学的研究: VI.二倍体種問交雑およびコルヒチン処理により作出された複二倍体栽培品種`Fragrant Pink Improved'
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概要
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1960年より始められた合衆国農務省のツバキ属育種計画シリーズの1部として,二倍体種ユキツバキ(PI228187C.japonica subsp.rusticana)×ヒメサザンカ(PI226756 C.lutchuensis)の二倍体種間(節間)雑`Fragrant Pink'を作出し,その後この栽培品種のコルヒチン処理により,複二倍体植物(2n=60)`FragrantPink Improved'(B 60345)を育成した。本報告は,`Fragrant Pink Improved'とその栽培品種作出に関与したすべての系統の花粉母細胞減数分裂における染色体対合に関する観察結果である。二倍体ユキツバキ(PI 228187)とヒメサザンカ(PI 226756)において,減数分裂第一中期で検鏡したすべての花粉母細胞に15個の二価染色体がみられた。それぞれの二価染色体で,キアズマは常に2個ずつみられた。これら2種の花粉稔性はほぼ100%と高い。それら2種問にできた二倍体雑種`FragrantPink'においてもまた15個の二価染色体がすべての花粉母細胞減数分裂中期で観察された。それぞれの二価染色体で,キアズマの頻度が平均1.9と,両親の頻度に比べてほんのわずか落ちることが確認された。しかしこの雑種は平均4%という非常に低い花粉稔性を示した。`Fragrant Pink'のコルヒチン処理により得た複二倍体栽培品種`Fragrant Pink Improved'の花粉母細胞減数分裂中期の染色体対合を調べると,二価染色体形成が常に優位を占めて,最も普通にみられた対合式は5_<IV>+20_<II>であった。これ以外にもさまざまな対合式がみられた。これにともない,キアズマの頻度も幅の広い変化を示した。この複二倍体は,平均77%のかなり高い花粉稔性をもつ。以上の結果から,ユキツバキとヒメサザンカは,分類学上の節の区分を越えて,互いに比較的高い相同関係にあり,同一カテゴリーに入れるべきであろうが,それらの染色体の多くには種々の程度の微細な構造的差異が存在するように思われる。
- 日本育種学会の論文
- 1978-12-01
著者
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