イタリアンライグラスの同質四倍体集団における異数体の頻度
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
同質四倍体イタリアンライグラスの既存の品種・系統(後期世代)と倍加後2〜3世代の系統(初期世代)の体細胞染色体数および花粉母細胞(PMC)における染色体行動を調査した。観察された染色体数の幅は両世代とも2n=24〜31の範囲であった。異数体の出現頻度は後期世代の1グループで平均47%,2グルーブ(とくに耐雪性で選抜育成された系統)で平均56%,および初期世代(3グループ)で平均59%であった。これらの頻度の差は1グループと2グループおよび1グループと3グループの間で有意であった。また低数体はすべての集団で高数体より出現率が高かったがその程度は集団によって異なった。PMCのMIにおける染色体の対合状態の観察では,後期世代は初期世代と比較して四価染色体の頻度が低く二価染色体の頻度が高かった。このことは後期世代が初期世代より異数体の出現頻度が低いことと対応するものと思われる。実際栽培に供されているような四倍体品種は倍加後かなりの世代数を経過していると考えられ,異数体の出現頻度(種子における)は各世代ぽぽ等しく,すなわち異数体と正四倍体の頻度は平衡状態に達していると考えられる。平衡状態では異数体の出現頻度ベクトルをU=(u,1-u)とすれば(u,1-uはそれぞれ正四倍体,異数体の出現頻度),UP=Uが成り立つ。ここでPは推移確率マトリックスである。すなわち[numerical formula]ただし,p,qはそれぞれ正四倍体より異数体を,異数体より正四倍体を生ずる確率である。したがってp,qの値がわかればuの値が定まる。しかし実際には異数体は正四倍体に比べ適応度が低下することが予想され,正四倍体,異数体の淘汰値をそれぞれ1,1-sとすれば平衡状態におけるu,p,q,sの関係式が次のように導かれる。(1-u)(q-u)(1-s)-u{u-(1-p)}=0上式よりp,q,sの値が定まればuの値が求められ,p+qの値とq/Pの値が小さいほどuにおよぽすsの影響が大きい。2グルーブの異数体頻度が比較的高いことはp,qの値が他の集団と異なっているためか,あるいは異数体の適応度が通常の採種条件(無雪)の場合と異なることによるものと考えられる。
- 1978-09-01