イネ葉身光合成能力の遺伝様式

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イネの葉身光合成能力の遺伝ならびに光合成能力と他形質との関係を調べる目的で,日本イネ品種中生新千本(P_1)とアメリカ品種CP-SL0(P_2)との雑種集団について,炭酸ガス赤外線分析法により,葉身光合成能力を測定した。光合成能力のF_1平均値は,低光合成能力親であるP_1に非常に近かった。F_2では,高光合成能力親であるP_2からP_1までの幅広い変異を示し,P_2ならびにP_1付近にモードがあった。後者のモードにふくまれる低光合成能力個体の頻度は,前者の頻度よりもはるかに高かった。以上のF_1およびF_2における結果から,光合成能力の発現には単一の主働遺伝子が関与している可能性が大であり,また低光合成能力が優性と考えられる。F_2集団において,光合成能力は葉面積/葉乾量比(specific leaf area)と有意な負の,また葉面当たり窒素含量と有意な正の相関を示した。後者の関係のみが偏相関係数においても有意であり,光合成能力と関連する主な要因は葉面当たり窒素含量であることがわかった。しかし,光合成能力の発現には,本試験では明らかにできなかった他の要因も関与することが示唆された。到穂日数,稈長,穂長,粒の長/幅比のそれぞれと光合成能力との間には,F_2集団ではいずれも有意な相関がなかった。また,光合成能力とエステラーゼ同位酵素,俘光色,芒性,葉毛性などの単遺伝形質との間にも有意な相関がなかった。一方,光合成能力をふくめた七つの農業形質においては,有毛性F_2個体群と無毛性F_2個体群との間に有意差がなく,日本イネに無毛性を効果的に導入することが可能であると思われた。以上,光合成能力の遺伝様式は比較的単純であり,また種々の農業形質とは独立的であることから,将来のイネ育種こおける意識的選抜により,光合成能力を増大しうる可能性があると結論される。
日本育種学会の論文
1977-03-01

イネ葉身光合成能力の遺伝様式

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