イネ種子の休眠機構 : II.モミから単離同定された新しい生長阻害物質,モミラクトンAおよびBについて
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
イネの休眠種子のモミから生長阻害物質を分離同定するために,強い休眠性をもつ日本品種コシヒカリとインド品種Surjamukhiの種子を用いた。イネのモミ(約200kg)を2ヵ月間80%メタノールに浸漬したのち,メタノール抽出物を40℃以下の減圧下で水層まで濃縮した。この水層部をクロロフォルムに転溶した活性部を有機溶媒,n-ヘキサン,ベンゼン,エーテル,エチレンクロライト,エチル・アセテートによって順次分画した。各溶媒による抽出物をレタスの発芽試験によって検討した結果,ベンゼンおよびエーテル抽出物の中性分画に強い発芽阻害作用をもつ物質が含まれていることが判明した。ついで,これらの活性分画をTLCにより分離を繰り返し,2つの活性のある物質C_<20>H_<26>O_3およびC_<20>H_<26>O_4を結晶化した。モミから単離されたことにちなんで,これらの物質をモミラクトンAおよびBと命名した。モミラクトンBはAよりも生理活性が強い。とくにモミラクトンBはイネの根の伸長を阻害する作用が強く,代表的な生長阻害物質であるアプサイシン酸に類似した効果を示した。日本イネの中で休眠性の強いコシヒカリでは,モミラクトンAの含量がBよりも多く,コシヒカリより休眠程度の強いインド型イネ,Surjamukhiでは,BがAよりも多く含まれていた。この物質は,イネの発芽時に重要な役割を果すと考えられるジベレリンやインドール酪酸との間に相互作用が認められるようである。
- 日本育種学会の論文
- 1976-06-01
著者
-
加藤 忠弘
東北大学理学部
-
高橋 成人
東北大学農学研究所
-
高橋 成人
東北大学
-
綱川 光明
東北大学理学部
-
加藤 忠弘
東北大学理学部:(現)東京理科大学埋学部
-
加藤 忠弘
東京理科大理
-
加藤 忠弘
Faculty Of Science Tohoku University
-
北原 喜男
東北大学理学部化学科
-
佐々木 伸樹
東北大学理学部
-
北原 喜男
東北大・理
-
北原 喜男
東北大学理学部
関連論文
- アジア栽培イネの生態型分化 : I. フェノール反応の再検討
- キュウリモザイクウイルス感染ササゲ葉から浸出する2種のフェノール性化合物の性状
- 植物細胞と水分ストレス : 1.人参乾燥カルスの生存と再分化
- 49 イネの生育に与えるCO_2時期別処理の効果(予報)
- 日本イネにみられる低温クロロシス
- 48 イネの低温クロロシスに関する品種生態学的研究 : 7.低温クロロシス発現と温度・光条件,低温受感部等の一般的関係
- 稲の低温クロロシスに関する品種生態学的研究
- イネの低温クロロシスに関する品種生態学的研究 : 第5報 低温ククロロシス発現機構とくに葉の生長過程とクロロシス発現について
- イネの低温クロロシスに関する品種生態学的研究 : 第4報 低温クロロシス発現機構とくにクロロフィルの光分解について
- イネの低温クロロシスに関する品種生態学的研究 : 第2報 低温クロロシス発現機構とくに温度および光条件について
- イネの低温クロロシスに関する品種生態学的研究 : 第1報 低温クロロシスと生態型
- (22) CMV 感染ササゲ葉から水中に浸出される物質の同定とその生理活性 (東北部会講演要旨)
- Chaetomium globosumの生産する抗菌性物質
- (20) 罹病カボチャのリポキシゲナーゼ活性増加とリノレイン酸の酸化生成物の構造 (秋季関東部会)
- (39) 2, 3のり病植物における不飽和脂肪酸の酸化酵素活性 (夏期関東部会講演要旨)
- (68) Chaetomium globosumの生産する抗菌物質 (昭和63年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- 48(PA1-6) セコトリネルビタン型ジテルペンの合成とコンホメーション解析(ポスター発表の部)
- ニンジンの乾燥カルスからの植物体再生
- 日本型イネおよびインド型イネの発芽特性に関する比較生理学的研究 : 4.嫌気および好気両条件下において生長調節ホルモンが両亜種の除穎種子に及ぼす影響
- イネの種子形成期の温度条件が幼植物の生長に及ぼす影響
- 地下部への温度ストレスによるプロリンの植物体内への集積について〔英文〕
- イネ節間の伸長を支配する単一劣性遺伝の発現に及ぼす温度ストレスについて〔英文〕
- 日本型イネおよびインド型イネの発芽特性に関する比較生理学的研究 : I.種々の酸素分圧下における両亜種の発芽特性の比較
- 栽培イネ(Oryza sativa L.)の生態型分化におけるKCIO_3抵抗性について
- 水田における生産環境の成立機構の解明 : (1)水稲個体群内の環境
- 日本イネの特異性としての発芽におよぼす酸素の阻害効果
- 作物個体群内におけるCO_2環境に関する研究
- 畑地土壌におけるCO2放出速度--オオムギ畑の例
- 種子の形成と登熟
- 気温および水温が日本型イネ品種の出穂日におよぼす影響
- SB-6 イネ諸形質の温度反応にみられる遺伝的多様性
- 水稲群落における放射状態と生産力
- 42 稲の生態型分化と温度条件 : 2. 出穂と気温および水温
- いもち病感染イネ葉におけるリポキシゲナーゼ活性の変動
- 14 アキタブキ・ふきのとうの一成分,Bakkenolide-Aの構造
- 2C-11 アスパラガス酸の生理作用
- アスパラガスの成分 : アスパラガス酸の化学構造と生理作用
- 13. 新しい植物生長調節物質,アスパラガス酸の化学構造と生理作用
- 31 新しい植物生長調節物質,アスパラガス酸の化学構造と生理作用
- 2B15L 植物組織の脱分化,再分化に関する二,三の知見
- 340 タカサゴシロアリの道しるべ物質について(2)
- A302 タカサゴシロアリの道しるべ物質について(コミュニケーション・防御物質)
- 19 テルペノイド合成を目的としたポリエン類の閉環反応
- (12) イネいもち病抵抗反応の発現に及ぼす脂肪酸合成阻害剤の影響 (昭和59年度 日本植物病理学会大会講演要旨)
- (5) イネいもち病感染葉鞘組織の脂質過酸化反応 (東北部会講演要旨)
- 46 ビシクロ[3.2.2]ノナン類の転位反応を活用した縮環骨格形成 : (±)-セスキカレン,(±)-ピングイソン,(±)-ウィドロールおよび(±)-プチロカウリンの全合成
- ナスの未受精胚珠、およびトウモロコシの子房培養
- 生長抑制物質,モミクラトンの分析法
- いもち病罹病イネ葉を用いた試験管内酵素反応により生成されたα-リノレン酸のヒドロパーオキシドの細胞毒性と抗いもち病菌活性
- (85) いもち病罹病に伴うイネ葉のリポキシゲナーゼ (LOX) 活性の変動 (昭和62年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- ビシクロ〔3.2.2〕ノナン類の転位反応を活用した縮環天然物合成
- 55 イネの代謝する、抗いもち菌活性を有する酸化型不飽和脂肪酸
- (225) 健全及びいもち病罹病イネ葉より抽出される抗菌性脂肪酸化合物量の品種間差異 (昭和60年度 日本植物病理学会大会講演要旨)
- (33) イネいもち病菌接種および非接種ふくゆきから単離された抗菌性を有する脂肪酸化合物 (昭和58年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (72) いもち病罹病イネから単離された抗菌性を示す脂肪酸 (昭和57年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- 32 含硫黄セスキテルペン,ミントスルフィドについて
- 73 セコタキサン骨格および二,三のセンブレン型天然物の合成
- TBCO(2,4,4,6-tetrabromocyclohexadienone)によるポリエンの選択的臭素化反応
- 29 ポリエンの閉環反応によるテルペノイドの合成-II
- イネ種子の休眠機構 : II.モミから単離同定された新しい生長阻害物質,モミラクトンAおよびBについて
- 139 センブレンAおよび類縁化合物に対するイエシロアリの道しるべ活性(一般講演)
- イネいもち病菌に対するモミラクトンA, Bおよびその誘導体の抗菌活性
- (16) イネいもち病菌分生胞子の発芽に及ぼすモミラクトンA, Bおよびその誘導体の影響 (昭和54年度 日本植物病理学会大会講演要旨)
- モミの化学調節物質-モミクラトン-の構造と生理作用
- 20 モミの化学成分 : 主に生長調節作用物質について
- 10. モミから単離された植物の生長抑制物質,momilactonesの構造
- 72 イネの生態型分化と温度条件 : 1. 出穂性と生態型
- ビール用大麦の種子発芽性に関する研究(2) : 発芽様式を特徴づける要因について
- ビール用大麦の種子発芽性に関する研究
- 種子形成条件と発芽性
- イネの低温クロロシスに関する品種生態学的研究 : 第6報 各部位の温度処理によるクロロシス誘発と澱粉蓄積について
- レタス種子の光発芽特性に関する研究
- 3E-7 種子の形成過程における環境条件の影響
- グループ研究集会"変異と環境"について : 特殊環境による変異の誘導と遺伝的調節作用
- 2C-3 レタスの種子形成期における日長および温度条件と発芽の変動様式について
- 24 四環性ジテルペン類の全合成研究
- TBCO (2, 4, 4, 6-tetrabromocyclohexadienone) によるポリエンの選択的臭素化反応
- 稲節間の伸長制御と環境
- ビシクロ [3.2.2] ノナン類の転位反応を活用した縮環天然物合成
- 種子の世界-14-
- 種子の世界-15-
- 種子の世界-13-
- 種子の世界-12-
- 種子の世界-10-
- 種子の世界-11-
- 種子の世界-9-
- 種子の世界-8-
- 種子の世界-7-
- 種子の世界-5-
- 種子の世界-6-
- 種子の世界-3-
- 種子の世界-4-
- 栽培植物の形質発現と環境
- 水稲分蘖の発生機構に関する一知見 : I. 要素欠除下に栽培した水稲の分蘖発生について
- S1-5 イネ種子の発芽特異性について (イネ : その特異性をめぐって)
- 76 作物における芽生器官の生長と環境 : とくにイネのMesocotylとColeoptileの生長について
- 生合成仮説を考慮したテルペノイドの合成と反応
- スクアレンの閉環反応
- 水稲分蘗の発生機構 : II. 追肥並びに穂の剪除による分蘗芽の形成とその伸長について (第115回 講演会)
- 生合成仮説を考慮した天然物の合成と反応 : 主としてテルペンおよび簡単なフェノール類について