稲の diploid と tetraploid 系統間の交配結果について
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概要
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1.1943年と1948年とに著者等は稲のtriploidを作る目的でdiploidとtetraploidとの間に相反交配を試みた。両年を通じて427個のtetraploidの花と,672個のdiploidの花とに行った交配から全くtriploidが得られなかった。2.1949年には常にこdiploidを母方にとり,交配方法を多少ずつ変えて,更に大規模の実験を試みた。実験につかった総花数は22,639に及んだ。その結果,28仙のtriploidを得た。交配の仕方とtriploidの出来た率との関係は次のようである。本文実験III.温湯除雄後開花したものに直ちに授粉した場易合………・…………・・……………………0.05%本文実験IV-a.温湯除雄によって一度開花した花を2〜6時問後に切頴法によって授粉した場合・・…・0.03%本文実験IV-b.温湯除雄によって一度閉花した花を10〜12時問後に切頴法によって授粉した場合…0.25%本文案験V-b.温湯除雄によって開花しなかった花を一日後に切頴法によって授粉した場合…………1.09%3.上述の如く,2x×4xによって極めて低率ながら3xの作出に成功した。そのの場合の実験成績に照して,開花1日前位の花を温湯処理して処理の1日後に授粉する方が最も効果的のようである。その場合でも成功率は約1%であった。4.農家の圃場一に偶然発見されるtriploidの成因については,これを栽培のdiploid稲と,その圃場に別の事情からすでに混在するtetraploidとの交配結果と見ることは出来ないようである。5.稲に於いても他の植物と同様に双子が生じることがある。一・般に,双子の片方がhaploidかtriploid又はtetraploidとなる場合のあることが知られている。それらの中,最も起り易いのはtriploidで最も起り難いのはtetraploidである。農家の水田では,最も遭偶し易いのはtriploid,次はhaploidとtetraploidのようである。これらのtriploidとhaploidは,少くともその大部分は双子の片方として生じたもの,tetraploidの大部分は或種類の高度不稔個体の子孫として生じたものと考えられる。6.1949年の交配実験を通じて約O.3%,69個体,の母本に似た次代植物が得られた。これらは母体が,純糯性の場合には純糯性を,純粳性の場合に純粳性を示した。母本がそれらの性質について雑種性の場合には純粳性のもの,雑種性のもの,純糯性のものの三種類を生じた。7.1949年の実験では特に花粉の混淆のないように注意したつもりであったが,上記の母本に似た固体(少なくともその大部分)は,染色体の倍加を伴ったパーセノゼネシスの結果ではなく,矢張り、思わざる白花校粉の結果であったと見ざるを得ない。8.この実験に於てはtriploid以外のhaploid或はその他の異常染色体数の個体は発見されなかった。
- 日本育種学会の論文
- 1959-09-30
著者
-
盛永 俊太郎
農技研
-
盛永 俊太郎
National Institute of Agricultural Sciences
-
栗山 英雄
National Institute of Agricultural Sciences
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