水稲の強稈性に関する育種学的研究 : 1. 強稈性および関連形質の品種間差異
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概要
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水稲の耐倒伏性品種を育成するに当たっての基礎資料を得るため,1970年から1973年にわたり,26品種を用いた圃場試験から強稈性に関係のある形質が解析された。圃場での倒伏と水稲の各形質との相関からは,稈型指数(稈基外径/稈長)が各年次とも安定して高い相関を示した形態的形質であり,なびきにくい品種で稈型指数の値が高い傾向があった。またフジミノリとイナバワセの間に,少肥と多肥および倒伏進行過程で逆転塊象がみられた。この逆転現象は両品種の生理的特性の差異が原因と考えられ,この特性を表す形質として稈基部への再蓄積力(登熟後期の稈基重増加率)を考えた。フジミノリは各年次とも再蓄稜力が強く,イナバワセは弱く,挫折しにくい品種で再蓄積力が強い傾向にあった。これらの結果の理論的根拠を挫屈に関するEULERの公式に求めたところ,稈型指数は公式の形態要素と,また再蓄積力は公式の材質要素の増減と関係が深かった。以上のことから,稈型指数は肉眼観察が容場で遺伝率も高いため,なびき倒伏に対する抵抗阯の選抜形質として有用であり,また再蓄積力は遺伝率が高く,挫折倒伏に対する抵抗性の選抜形質として有用であると考えられる。両者を組み合せることによって,一段とレベルの高い強稈性品種を育成し得る可能性が示唆された。
- 日本育種学会の論文
- 1983-12-01