アフリカイネ(Oryza glaberrima)におけるモチ遺伝子座の形質発現
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概要
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本研究では、異なる細胞質をもつモチ性およびウルチ性のO. glaberrimaを用い、O. glaberrimaの遺伝的背景のもとでのモチ遺伝子の発現と、その発現に細胞質が及ぼす影響について検討した。供試系統として(1)O. sativaのモチ性日本品種祝糯の細胞質とウルチ性O. goaberrima、W0440の核をもつウルチ性細胞質置換系統(Iwai-mochi)-W0440、Wx/Wx、(2)祝糯の細胞質とW0440の核をもち、祝糯由来のモチ遣伝子をもつ細胞質置換系統(Iwai-mochi)-W0440、wx/wx、(3)W0440の細胞質と核をもち、祝糯由来のモチ遺伝子をもつ系統(W0440)-W0440、wx/wx、(4)ウルチ性O.glaberrima、GMS87のEMS処理により誘発されたモチ性突然変異系統GMSの4系統および対照としてW0440、祝糯、GMS87の3系統、計7系統を用い(Table 1)、胚乳澱粉を調製してヨウ素吸収曲線、澱粉の枝切りによるアミロース含量とアミロペクチンの鎖長分布、示差走査熱量計(DSC)による糊化特性について調べた。また、GMS87とGMSを相互交配したF_1を用い、モチ遺伝子の量的効果について検討した。ヨード吸収曲線のパターンと枝切り澱粉のゲル濾過実験により、モチ遺伝子をもつ供試系統の澱粉はすべてアミロースを含んでいないことが明らかとなった(Table 2、Fig.1、Table 3)。したがって日本品種祝糯由来のモチ遺伝子および誘発突然変異によるO. glaberrimaのモチ遺伝子のいずれもO. glaberrimaの遺伝的背景のもとで正常に発現されていると考えられた。しかし(Iwai-mochi)-W0440、Wx/Wx、(Iwai-mochi)-W0440、wx/wx、および(W0440)-W0440、wx/wxの3系統では、アミロペクチンの鎖長分布を示す一つの指標となる値であるアミロースの長鎖と短鎖の比が、祝糯における値よりもW0440の値に近く、モチ遺伝子以外の核遺伝子が澱粉のアミロペクチンの鎖長分布に影響を及ぼしている可能性が考えられた。また、GMS87とGMSのあいだのF_1で、澱粉のアミロース含量に関してモチ遺伝子の量的効果が起こっていることが示唆された(Table 2)。(Iwai-mochi)-W0440、Wx/WX、(Iwai-mochi)-W0440、wx/wx、および(W0440)-W0440、wx/wxの3系統ではモチ遺伝子の有無にかかわらず、澱粉の糊化特性には大きな差異がなかった(Table 4、Fig.2)。一方、EMSで誘発されたモチ性のO. glaberrima GMSは、ウルチ性O. glaberrima GMS87に比べて糊化温度が高く、糊化熱も大きかった。これらの系統間のF_1の糊化特性は両親の中間となった(Table 5、Fig.3)。澱粉のアミロース含量、糊化特性のいずれにも細胞質は影響を与えていなかった。
- 日本育種学会の論文
- 1988-09-01
著者
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