イネの雄性不稔細胞質が日本型ハイブリッド品種の収量および諸形質におよぼす影響について
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概要
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本研究は,インド栽培イネChinsurah BoroII(BT型),中国雲南栽培イネ峨山大白谷(D型),海南島野生イネ(O. sativa f. spontanea)の雄性不稔株(WA型)および海南島紅芒野生イネ(O. sativa f. spontanea)(WC型)に由来する4種の雄性不稔細胞質における日本型ハイブリッドイネの収量および他の諸形質におよぼす影響を調べた。4回復系統"77302-1","寧恢3-2","C57"および"C堡"を花粉親として,それぞれ4細胞質を持つ雄性不稔系統"南粳11A"および"南粳34A"とそれらの維持系統"南粳11"および"南粳34"と交配し,不稔細胞質を持つ雑種(aF_1)32系統および正常細胞質を持つ雑種(bF_1)8系統を得た。aF_1とbF_1を比べた結果,雄性不稔細胞質は,雑種の草丈,穂頚長,1種籾数,稔実率,収穫指数および株あたり収量において,著しく負の影響がみられ,逆に,穂数,1穂穎花数,千粒重および乾物重には,著しく正の影響がみられた。これらの影響は不稔細胞質源によって異なった。これは,供試に用いた不稔細胞質源に対する回復系統の稔性回復能力の違いによって説明された。回復系統があるBTおよびD型不稔細胞質は雑種の株あたり収量において正の効果を示し,それらの雑種は平均して20%以上の中間親または優良親に対する収量ヘテロシスを示した。また,稔性維持系統と回復系統の遺伝子型およびそれらの相互作用も不稔細胞質のF_1形質におよぼす影響を左右する効果がみられた。これらの結果から,雄性不稔細胞質,維持および回復系統を選抜することによって不稔細胞質の負の効果を最低限に抑え,収量ヘテロシスのある雑種を作出することが可能であると推測される。
- 日本育種学会の論文
- 1998-09-01
著者
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