スペクトル境界法を用いた気象研究所地域気候モデルの性能評価
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概要
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地域的な気候を再現するためには、狭領域モデルを長時間積分する必要がある。そのために、我々は中と外のモデルをスムーズにつなぎ、側面境界付近で発生するノイズを押さえるために、波数空間結合(SBC)法を用いた。水平変換格子間隔40km(60°Nで)の気象研究所地域気候モデル(MRI/RCM)をSBC法を用い全球解析(GANL)にネスティングし、1994年の1月と8月に関して1ヶ月間の長時間積分を行い、ネスティングの方法について検討した。実験は次の4通りのネスティングの方法によって行われた。まず、境界付近に緩和領域を用いたもの(CASE A)、全層にSBC法のみを用いたもの(CASE B)、σ=0.5以上の層のみにSBC法のみを用いたもの(CASE C)、そして、緩和領域に加えてσ=0.5以上の層にSBC法を用いたもの(CASE D)である。統計的手法を用いて計算結果と観測結果の比較を行った。その結果、SBC法を用いなかった場合、850hPaの高度の平均二乗誤差(RMSE)は、計算領域の中央付近より境界付近の方が良くなっていた。それに対し、SBC法を用いた場合は、計算領域の中央付近のRMSEが良くなっていた。夏の場合、SBC法を用いることにより、850hPa面の高度の再現性は改善されたが、全層にSBC法を用いると地上気温と降水量のスコアーが悪くなった。ここで考えられたほとんど全ての統計量は、σ=0.5以上の層にSBC法を用いることにより改善された。冬の場合、境界緩和法を用いた方が、境界付近のノイズを効率的に押さえることが出来、SBC法による改善はわずかであった。しかし、σ=0.5以上の層に適用されたSBC法と境界緩和法を両方用いることによって最も良いスコアーが得られた。SBC法は、地域気候モデルにとって有効な方法であることが統計的に示された。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 2000-08-25
著者
-
佐々木 秀孝
気象研究所
-
佐藤 康雄
気象研究所環境・応用気象研究部
-
木田 秀次
京都大
-
木田 秀次
京都大学大学院理学研究科
-
木田 秀次
京都大学
-
佐々木 秀孝
気象研、環境・応用気象研究部
-
足立 万代
気象研究所
-
佐藤 康雄
気象研究所
-
佐藤 康雄
気象研・環境応用
-
佐藤 康雄
気象研、環境・応用気象研究部
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