啓風丸レーダーにより観測された発達初期の台風Yancy(T9313)内の対流の構造と進化
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概要
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1993年8月30日から9月1日まで、(19N, 129E)周辺の北西太平洋上を西進した初期の緩やかな発達期にあった台風Yancy(T9313)が、気象庁観測船啓風丸で観測された。この期間中、Yancyの循環中心は啓風丸の北80kmまで接近した。Ydncy中心部の対流が、船上で得られたレーダー、海上気象、高層気象観測データと最近利用可能になった衛星データを用いて解析された。セルエコー追跡風(CETwinds)が見積もられYancy周辺の下層風データを補うために使用された。初期発達期間中に、雲が1500kmスケールの下層低気圧性循環(LLCC)の南西象限に存在し中心を一にしない構造が、雲システム中心部の円形の厚い上層雲('CDO')の形成を経て同一中心を持つ構造へと遷移した。この同一中心を持つ構造の確立後、Yancyの後期の急激な発達が始まった。Yancy内に様々なメソスケ-ル(100-500km)降水体(MPFs)が次々に組織され時間発展した。このMPFsの形態は台風初期発達過程が4つのサブステージを経て進展するにしたがって変化した。第1サブステージでは大きな(400km)エコーシステム(LES)がLLCCの南西象限に組織され、その上に円形雲システムが出現した。第2サブステージでは、長続きするメソスケールの強い対流域(MICA)がLESの北西端に組織され、それが円形雲システム中の'CDO'のメソスケール降水実体であった。LLCCはMICAの形成後500kmスケールで強化されたようであった。第3サブステージでは、強い低気圧性循環中で、LESと雲システムは500km以上の長さを持つコンマ型スパイラルバンドへと進化した。最終サブステージでは、スパイラルバンドの曲率は増し、より内側のほぼ円形に近いスパイラルバンドが更に強化されたLLCC中に現われた。コンマ型システムの北側頭部はLLCC中心を巻き込みつつあった。MICA周辺に、下層の流れに垂直な線状システムと平行な線状システムが、第1サブステージと第2サブステージに各々形成されていた。LESとMICAは初期発達過程にあるYancyの核構造を構成していた。MICAは、長続きする、エコー頂が高度16kmに達する強い対流にとって3次元的に都合よく組織された構造を持っていた。MICAと500kmスケールのLLCCは互いに強め合っているようであった。MPFsのいくつかの特徴がまとめられ、それらは山岬(1983, 1986)により数値的に再現された、発達中の台風内のメソ対流の特徴とよく対応しているようであった。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1999-04-25
著者
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森 一正
気象研究所
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森 一正
気象庁気候・海洋気象部海洋気象情報室
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前平 岳男
気象庁気候・海洋気象部海上気象課
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竹内 仁
東京管区気象台
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前平 岳男
気象庁 気候・海洋気象部
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石垣 修二
長崎海洋気象台
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大矢 正克
気象庁気候・海洋気象部
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大矢 正克
気象庁気候・海洋気象部:(現)福岡管区気象台
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