初夏の東アジアおよび西部北太平洋域にみられる対流活動と循環場の10-25日季節内変動
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1991-94年初夏の東アジアおよび西部北太平洋モンスーン域における対流活動と循環場の10-25日周期季節内変動についてデータ解析を行った。特に、同時間スケールで変動する南シナ海上の対流活動と東アジア亜熱帯域の下層循環場の関係に注目し、コンポジット解析を適用して調べた結果、この対流活動がアジア-太平洋域の大規模循環場の変動に関係しており、これを通じて亜熱帯域の循環場の発達をもたらす側面が明らかになった。南シナ海上の10-25日スケールの対流活動は、その活発(不活発)時には下層の低気圧(高気圧)性循環偏差を伴っている。それらのピーク時には南シナ海付近から北太平洋に向かって波列が形成され、これは加熱(冷却)偏差に対するRossby応答であると考えられる。南シナ海上の対流活動の活発のピークに引き続いてこの波列の一部分として東アジア亜熱帯域に発生する高気圧性偏差は、それに沿った下層水蒸気輸送を強化し、その北縁の亜熱帯対流活動の強化に寄与することができる。同時にこの高気圧性偏差は南シナ海に向かって南西進し、南シナ海上の次の対流活動の抑制を引き起こしている。逆に南シナ海上の不活発時に引き続いて亜熱帯域から南西進する低気圧性偏差は、次の南シナ海上の対流活動の活発化をもたらす。これらの特徴は、同時間スケールの熱帯一亜熱帯間の相互作用が、同領域のモンスーン循環の変動にとって重要な役割を果たす事を示している。対流圏上層においては、同時間スケールの対流活動の活発(不活発)時に南シナ海上で強い発散(収束)場が発生すると同時に中緯度偏西風帯の波列構造が最も強化されており、この対流活動が広領域の上層循環場へ作用していることを示唆する。以上の事により、南シナ海上の10-25日周期の対流活動は、初夏の大規模循環場に対する効果的な強制としての役割を果たすことが確認された。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1999-06-25
著者
関連論文
- 国際賞を受賞して
- P373 北半球冬季インド洋上における南西進する熱帯波動擾乱の構造と性質
- A155 夏の北極振動と関連したトレンドと北極海の海氷の関係(スペシャル・セッション「国際極年(IPY)2007-2008の成果と将来展望」II)
- 第10回日本気象学会夏期特別セミナー(若手会夏の学校)の報告
- C361 海南島に持続的豪雨をもたらした熱帯総観規模擾乱の発達(熱帯大気)
- 第23回国際測地学・地球物理学連合総会 : (IUGG2003・札幌)の報告(3)
- GAME再解析データの公開
- A107 疑似気候再現/疑似温暖化手法を用いた中国揚子江流域における過去の降水変動の再現とその将来予測(気候システムI)
- 第4回GEWEX国際会議報告
- A352 北ユーラシアにおける広域水循環の長期変動の研究(ユーラシア寒冷圏,スペシャルセッション「GAMEでアジアモンスーンはどこまでわかったか?」II)
- 東シベリアにおける夏季の大気地表面水収支の経年変動
- B359 東部インド洋上のSubmonthlyスケールの南風サージと中緯度 : 熱帯相互作用(気候システムIII)
- P303 北ユーラシアにおける夏季降水の東西経年変動に関連した大気循環場に対する総観規模擾乱の役割
- 夏季モンスーン暖水域上での西風強化イベントと海面付近の変動について
- レナ川流域における水収支の季節変化と年々変動
- 1960-70年代に顕著に見られた2年周期振動の解析
- 梅雨前線帯の強化過程に対する中緯度季節内波動の役割
- 夏季の西太平洋上の10-25日波動の構造の季節性と維持について
- 西太平洋上のMJOスケールの対流活動域の北東方向への発達
- 初夏の東アジアおよび西部北太平洋域にみられる対流活動と循環場の10-25日季節内変動
- 東アジアモンスーン循環に対する熱帯季節内擾乱の影響 -10-20日及び30-60日周期擾乱の役割と比較-
- 西部北太平洋モンスーン前期エピソードにおける季節内擾乱活動 -15-20日周期変動について-
- 夏季東アジア西太平洋モンスーン循環におけるShort-term Intraseasonal Variation
- P340 広域アジアモンスーンの長期変化傾向とその季節性(ポスター・セッション)
- B102 春季の東アジアにおける降水の季節進行(気候システムI,口頭発表)
- B103 全球雲解像モデルNICAMにおけるヒマラヤ〜バングラディッシュ地域の準2週間スケール降水変動と熱帯波動擾乱の再現性(気候システムI,口頭発表)
- B104 中部ベトナム降水の発生に及ぼす熱帯擾乱と冬季アジアモンスーンの影響(気候システムI,口頭発表)
- 3.チベット高原の上昇は新第三紀以降のアジア・太平洋域の気候変化とアジアモンスーンの成立にどのような影響を与えたか? : 大気海洋結合大循環モデル(MRI-CGCM)による数値実験結果から(2005年度春季大会シンポジウム「地球環境の進化と気候変動」(地球環境問題委員会共催)の報告)
- P366 アジアモンスーンの季節変化におけるヒマラヤ・チベット山塊の存在の効果 : 夏季アジアモンスーンのオンセット : 気象研究所大気海洋結合モデルによる数値実験
- P389 耕地化がアジアモンスーンに与えた影響の評価 : 産業革命以前(1700-1850年)の変化
- モンゴルにおける夏季降水特性の特徴とその長期変化
- P202 モンゴルにおける夏季降水特性の特徴とその長期変化
- モンゴルにおける夏季降水特性の特徴とその長期変化
- P143 アジアモンスーン冬季における持続する北風サージの熱帯への影響(ポスター・セッション)
- 国際アジアモンスーンシンポジウム(IAMS)参加報告
- P163 インドシナ半島における雲降水活動の日変化の季節推移
- 梅雨前線の南北分布の経年変動特性
- P155 ボルネオ島西部における季節内変動に伴う降水日変化特性
- P423 海洋大陸での降水安定同位体比にみられた季節内変動
- P220 ボルネオ島西部における降雨活動の日変化特性
- 温帯低気圧の一生に関するシンポジウムの報告
- C214 夏季の北極海の海氷と大気循環の関係(相互作用)
- D101 チベット高原が冬季から春期のアジアモンスーンの季節進行に果たす役割 : AOGCM地形除去実験を通して(チベット高原気象学の進展,専門分科会)
- 地域・大陸スケールでの植生・気候相互作用(創立125周年記念解説)
- 1.国際研究プロジェクトとは何だろうか? : GAMEから学んだこと(2005年度秋季大会シンポジウム「大規模観測プロジェクトは気象学に何をもたらすか」の報告)
- 4. 東アジアにおける近年の水循環と気候の変動について(2003年度秋季大会シンポジウム「東アジア域における環境変化と気候」の報告)
- 1. はじめに(国際アジアモンスーンシンポジウム(IAMS)参加報告)
- B208 東アジアにおける夏季降水量と強雨の出現頻度の長期的な変動傾向(気候システムII)
- GAME-IOP期間中に中国大陸上で観測された可降水量の日変化
- チベット高原アムドにおけるGAME/TIBETラジオゾンデ集中観測
- A151 今、アジアモンスーンで何が問題か?(スペシャル・セッション「GAMEからMAHASRIへ〜モンスーン研究の進展と今後〜」)
- P318 2006/07年冬季アジアモンスーン域マレーシアでの豪雨と北風サージ
- B453 地球温暖化時における冬季東アジアモンスーンの変調 : CMIP3マルチモデルアンサンブルを用いて(CMIP3マルチ気候モデルにおける大気海洋諸現象の再現性比較,専門分科会)
- D162 夏季チベット高原上の対流活動の日変化と季節内変動の関係(チベット高原気象学の進展,専門分科会)
- A105 夏季オーストラリアにおける雲量の長期的な増加傾向(1984年2004年)(相互作用)
- P166 Space-Time Characteristic of Seasonal and Inter annual Variations of Precipitation, Convergence and Evaporation over South Asia
- P341 梅雨(Meiyu)期における中国大陸上の対流活動の数週間周期季節内変動
- P310 タイにおける9月の降水量の長期減少傾向と関連する大気循環場の変化
- 10. 感想(国際アジアモンスーンシンポジウム(IAMS)参加報告)
- 「イエスマン」中嶋暢太郎先生の想い出
- 学会誌は学会そのものである
- 21世紀における水文・水資源学会の役割
- P157 海洋大陸域を通過する季節内擾乱の内部構造とその季節変化
- A154 アジアにおける冬季地上気温の主要モードからみた2005/06年の日本の寒冬の原因(スペシャルセッション「2005/06年の異常な冬について」II)
- P254 海洋大陸において大規模擾乱中を東方伝播する日周変化擾乱について
- P109 ニューギニア島における対流・降水活動の季節内変動に伴う日周変化変動
- D208 冬季地上気温における主要モードと太陽活動との関係(スペシャルセッション「力学・化学・放射過程を通した太陽活動の地球大気に及ぼす影響」)
- P217 アジアにおける冬季地上気温の経年変動とその要因
- アジアにおける冬季地上気温の経年変動
- P243 インドネシア海洋大陸における降雨活動の日変化の時空間特性 : TRMM衛星データによる解析
- P301 チベット高原上とその周辺域における対流活動と循環場の準2週間周期変動
- チベット高原における日変化を伴った雲活動の季節変化と季節内振動
- チベット高原上における日変化を伴った雲活動の季節変化
- 9. 季節内振動(ISO)(国際アジアモンスーンシンポジウム(IAMS)参加報告)
- P319 南シナ海上における30-70日周期変動の長期変動
- P209 南シナ海モンスーン域における季節内変動の経年変動特性
- 夏季アジアモンスーンの対流活動偏差における持続性と不連続性
- 東部インド洋と西部太平洋における対流活動偏差の季節性
- 西部熱帯太平洋の対流活動とインド洋東西振動の関係について
- 熱帯インド洋における大気海洋相互作用の東西非対称モード
- ENSO/モンスーン循環に関するECMWF・NCEP再解析データの相互比較
- D464 大陸規模積雪-大気循環場の年々規模共変動とその変化(大気循環,雪氷圏と気候,専門分科会)
- 春季ユーラシア積雪偏差に対応する全球大気場の変動
- B151 地球温暖化した場合の北極振動について(気候システムII)
- A308 インドシナ半島における気候学的な降水量減少とそれのモンスーン循環の季節進行への影響(気候システムIII)
- P311 南極域における水蒸気輸送の季節変化と大気循環
- (8)感想(3.モンスーンシステムの力学と変動)(第23回国際測地学・地球物理学連合総会(IUGG2003・札幌)の報告(3))
- (5)モンスーン域の季節内変動(11日午前)(3.モンスーンシステムの力学と変動)(第23回国際測地学・地球物理学連合総会(IUGG2003・札幌)の報告(3))
- 気候の研究とは何だろうか? WCRP-JSC24に出席して(WCPの窓)
- パタゴニア氷河研究の萌芽 : 1960年代の学術探検
- A455 ヒマラヤ・アッサム・バングラデシュ多雨帯におけるモンスーン準2週間周期変動 : 時空間特性とその機構(柳井迫雄先生追悼特別セッション:熱帯気象学の明日へ向けて,専門分科会)
- P112 夏季東南アジアモンスーンにみられる気候学的な中休みの機構
- GAME-IOP(1998)におけるタイ降水量の季節内変動
- P411 東アジアにおける春の雨季の季節進行(ポスター・セッション)
- B156 インド洋ITCZ上の波動擾乱に対する南半球中緯度からの強制(熱帯大気,一般口頭発表)
- B155 中部ベトナムの持続的豪雨に及ぼす季節内変動の影響(熱帯大気,一般口頭発表)
- A364 ユーラシア大陸における大気水収支変動(大規模モンスーン変動,スペシャルセッション「GAMEでアジアモンスーンはどこまでわかったか?」II)
- 「ユーラシア・アジアモンスーン地域の気候-陸域相互作用研究会」の報告(研究会報告)
- D307 インドシナ半島東岸での豪雨とMJO、ENSOとの関連(気候システムII,口頭発表)