複数レーダーと地上雨量計による降水量推定の一方法
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
レーダー雨量の精度向上に関しては(1)レーダー体積内の雨滴粒径分布の観測による補正, (2)地上雨量計による較正, が一般的である. しかし, (1)の方法は, 特に現業用レーダーのように観測対象領域が半径約2000程度までと広く, 地球の曲率, 地形の影響が大きい場合には必ずしも有効ではない. また, (2)の方法は, 海上では使えない. そこで, 複数の現業レーダーおよび地上雨量計を使用して, 海上を含むレーダーの探知範囲全体の降水量推定精度を向上させるため, 以下のような手順の方法を提案した. まず, レーダー観測誤差の主な原因として考えられる(1)レーダー受信感度に起因する誤差, (2)レーダー体積内の雨滴分布が地上付近と実際に観測した上空とで異なることからくる誤差(降水の鉛直プロファイルに起因する誤差), をそれぞれ変数で表し, さらに降水を観測しているレーダービームの平均高度を組み合わせて, レーダー雨量の補正係数を表現する. 次に, レーダー探知範囲全体の較正係数分布を作成するために, 二つの変数を, 最小自乗法により毎時間決定する. この手法に従ってレーダー雨量を補正したのち合成することで, 海上におけるレーダーの合成の境界付近での不連続が改善された. また, 鉛直プロファイルに起因する誤差の改善も認められた. この補正は, 毎時間計算が可能であることから, 擾乱や季節の変化に関係なく対応できることが特長としてあげられる. なお, この方法は, 気象庁が現業的に作成しているレーダー・アメダス解析雨量の作成手法の一部として採用されている.
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1996-08-25
著者
関連論文
- 非降水エコーの出現特性 : 日変化, 季節変化, 地上風速との関係
- 空港気象ドップラーレーダーで観測された非降水エコーの出現特性
- レーダーと系留気球搭載型サンプラーを用いた非降水エコーの成因調査(序報)
- 下館ダウンバースト 1996年7月15日 I : 現地調査と発生時の大気環境(速報)
- 7月5日午後、千葉市周辺で発生した竜巻(速報そのI) : 被害から見た竜巻の特徴と、大気環境の特徴
- レーダー・アメダス解析雨量におけるレーダー観測高度と雨量の出現頻度との関係
- 複数レーダーと地上雨量計による降水量推定の一方法